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5システマティックレビューのまとめ6パネル会議の結果弱とした。❹ 費用対効果 該当する論文は1本のみで,CRRMとサーベイランスでコストの比較を検討している。その効果指標に増分費用対効果比(incremental cost—effectiveness ratio:ICER)〔1質調整生存率(qual-ity—adjusted life year:QALY)を改善するために必要となる追加費用〕が用いられており,BRCA病的バリアント保有者ではCRRMの費用対効果の改善が認められている8)。しかしながら,日本の医療制度と異なる環境下での検討であることから,この結果を日本に外挿することはできない。以上の理由からエビデンスの確実性は非常に弱とした。❺ 患者の満足度 採用された論文の多くはBRCA病的バリアントを有さない対象も含んでおり,サンプルサイズも小さい。評価基準がQOL,ボディイメージ,セクシャリティ等,多岐にわたる。非直接性,バイアスリスク,非一貫性はいずれも大きくCRRMが患者満足度に与える影響について結論付けることは困難である。以上の理由からエビデンスの確実性は非常に弱とした。❻ 患者の意向 該当論文はBRCA1/2に病的バリアントを有する乳癌患者におけるCRRMに対する日本人の意向調査の1本のみであった9)。対象者の22.5%が今後CRRMを受けたいという希望をもっていると報告されているが,CRRMが保険収載される前の調査であることに注意が必要である。以上の理由からエビデンスの確実性は非常に弱とした。 CRRMによる乳癌発症リスクの低減効果についてはRRSOによる影響を調整した研究がほとんどないながらも,そのリスク低減効果は今回行われたメタアナリシスの結果よりほぼ確実であると考えられるため,確実性は「強」とした。一方,OSについてはRRSOの影響は大きいと判断されるため,十分なエビデンスがあるとはいえず,今回の検討では不確実性が残る。費用対効果については海外の研究のみであり,更なる検討が必要である。合併症,患者の満足度については,それぞれの評価尺度が研究毎に大きなばらつきを認めており,非一貫性が大きいために結論を出すことができない。患者の意向については日本からの研究報告であるが,CRRMが保険収載される前の調査であるために,現在の医療環境に即していない点を考慮して解釈する必要がある。 本CQの議論・投票には,深刻な経済的・アカデミックCOIのない乳癌領域医師3名,婦人科領域医師2名,遺伝領域医師3名,遺伝看護専門看護師1名,認定遺伝カウンセラー1名,患者・市民2名の12名が参加した。❶ アウトカムの解釈について 本CQで取り扱うCRRMの妥当性に関する問題は,その優先性について概ね委員の中でほぼ一致する結果となった。望ましい効果は「中」8名,「大きい」3名という結果となった一方,望ましく102

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