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❶ 乳癌発症リスクの低減効果 メタアナリシスの結果,対側乳癌発症については,RR:0.07(95%CI:0.02—0.23,P<0.00001)の結果となり,有意な対側乳癌発症リスクの低減効果を示した(図1)。しかし,統計学的異質性は中等度であることに注意が必要である(I2=66%)。またfunnel plotの分布からは出版バイアスの可能性も否定できない結果となった。 今回のメタアナリシスではRRSOについての調整を行わずに解析を行っている。理由としてはRRSOの調整を行っている論文が1本しかないことと,本ガイドラインの乳癌CQ6においてもRRSOの乳癌発症に対する影響を検討していることを考慮したためである。以上の理由から,エビデンスの確実性は強とした。❷ 全生存期間(OS) CRRMによるOSの改善効果を報告した論文が3編2)3)5),効果なしとしたものが3編4)6)7)であった。OSはあらゆる原因の死亡もイベントとして扱われるため,卵巣癌を発症している場合には乳癌以外のイベントによりOSが規定される可能性も十分に考慮する必要がある。このような背景がある中で,ほとんどの研究でRRSOの交絡因子の調整がされていないことがOSについて検討するうえで大きな問題となる。調整をした研究では,全死亡率がCRRM+RRSO群で7%とCRRM群で12%であったが,統計学的有意性の検証は行われていない2)。以上の理由からエビデンスの確実性は弱とした。❸ 合併症 今回採用した論文では,合併症としてCRRMが直接的に起因する術後合併症〔感染・疼痛・漿液腫(seroma)等の術後合併症,再手術率等〕やQOLに関するもの(ボディイメージ,精神面への影響)等,多岐に渡るアウトカムが含まれており,非一貫性が非常に大きい。またアウトカム毎に調査する時期やフォローアップ期間にばらつきが大きく,評価の統一も困難である。加えてCRRMの選択は患者本人によるため,選択バイアス・実行バイアスが大きく,行われている術式も乳房再建の有無等も統一されていない。さらには今回の採用論文にはBRCA病的バリアントの有無が明らかではない対象を含むものが複数あり,以上の理由からエビデンスの確実性は非常に乳癌領域4アウトカム毎のシステマティックレビューの結果「合併症」7編,「費用対効果」1編,「患者の満足度」11編(ハンドサーチよる追加3編含む),「患者の意向」は1編であり,これらについては定性的システマティックレビューを行った。Study or SubgroupEvans DG 2013Heemskerk-Gerritsen BA 2015Metcalfe K 2014van Sprundel TC 2005Total(95%Cl)Total eventsHeterogeneity:Tau2=0.82; Chi2=8.77, df=3(P=0.03);I2=66%Test for overall effect:Z=4.54(P<0.00001)Events5411no CRRMTotal59334120969Events118647032Weight32.7%30.8%18.2%18.2%CRRMTotal105242181796071212100.0%28411Risk RatioⅣ, Random, 95%Cl0.24[0.10, 0.57]0.09[0.03, 0.24]0.02[0.00, 0.12]0.03[0.00, 0.19]0.07[0.02, 0.23]0.001Favours CRRMRisk RatioⅣ, Random, 95%Cl0.1101000Favours no CRRM1101乳 癌 CQ 1図1  BRCA病的バリアントを有する乳癌既発症者におけるCRRMによる対側乳房のリスク低減効果に関するメタアナリシス(BRCA1/2の区別なし)(本ガイドライン作成にあたり実施したメタアナリシス)

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