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髄芽腫6 これ以降の論文でも,主にIQの評価はWISK Ⅲ or ⅣとWAIS-Rが用いられるが,そもそも髄芽腫患者の場合小脳失調症状を後遺することが多く,それがFull scale IQの低下に影響している可能性も考える必要がある。したがって,純粋な認知機能低下の進行を捉えるためには,前方視的に縦断的に調査しIQでもどの要素が変化していくのかを評価することが必要である。 2000年代のCCG9892の知的予後に関する結果2)は,3~15歳で播種のない(標準リスク群)43例で全脳脊髄照射(CSI)23.4 Gy+ブースト照射32.4 Gy,ビンクリスチン/lomustine(CCNU)/シスプラチンで治療した結果を,放射線治療後を起点に4年後まで経時的に調査した結果である。評価方法は,WISK-R/WISC-Ⅲ/WPPSI-R/SB4/McCarthyとさまざまである。ここではFull Scale IQが経時的に低下する(4.3/年)ことを示す一方で,男女差(女子の方がVerbal IQ低下が大きい),診断時の年齢による差(7歳未満では低下するが7歳以上では低下しない),Baseline IQでの差(IQ>100では低下の程度が大きい)などを示している。 2000年代のもう一つの論文はSJMB96に登録された症例のうち111例での検討である3)。最大6年(平均3.14年)の経時的な認知機能評価を受けた。高リスク群(CSI:36~39.6 Gy)/標準リスク群(CSI:23.4 Gy)と診断時の年齢(7歳以上/7歳未満)で4群に分類された。化学療法は4サイクルの大量化学療法(シクロホスファミド/シスプラチン/ビンクリスチン)が行われた。認知機能評価の初回は手術摘出後(登録時)で,その後1,2,5年の段階で評価した。多変量解析の結果全体ではmean IQ(-1.59/y,p=.006),読み(-2.95/y,p<.0001),書き(-2.94/y,p<.0001),算数(-1.87/y,p=.003)とも低下したが,群間比較ではmean IQは高リスク群では低下したが(-3.00/y,p=.004),標準リスクでは低下していなかった(-0.99/y,p=.13)(ただし2群間に有意差はない)。また同様にmean IQは7歳未満群では低下したが(-3.05/y,p=.0005),7歳以上群では低下しなかった(-0.61/y,p=.37)(2群間に有意差あり)。治療線量より治療時年齢の方がIQ低下の要素として強いと示された。ただし研究全体の規模からすると評価を受けた登録例は少なく,評価方法に関しても年齢によってさまざまであった。 2010年代になるといくつかの前方視的コホート研究が発表されている。 1つ目はCOG A9961の標準リスク群に対する放射線治療(CSI 23.4 Gy/ブースト照射32.4 Gy)と大量化学療法(CCNU/シスプラチン/ビンクリスチン,またはシクロホスファミド/シスプラチン/ビンクリスチン)後の知的・学業予後に関する報告4)である。登録全体379例中110例について5年以上の経過で評価した。Baselineの評価は放射線治療から9カ月以内に施行された。評価方法は,IQに関してはWPPSI-R/WISC-Ⅲ/WAIS-R/WAIS-Ⅲを用い,学習能力評価にはWide Range Achievement Test Ⅲなどが用いられた。全症例をまとめたデータでFull Scale IQは5年間にわたり年間1.9ポイント低下した。IQおよび学習能力の低下は,男女差はなく,無言症の有無でFull Scale IQとPerformance IQおよびReadingで有意差があった。Baseline IQの方が高い(IQ>100)方がFull Scale IQ低下の程度が有意に大きく,診断時7歳以上と7歳以下では7歳以下の症例のPerformance IQ低下率が有意に高く,摘出率では全摘群の方が低下率は高いが有意差はなかった。CQ 10 247

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