推奨1無言症/後頭蓋窩症候群では学習機能が低下するので特に注意して経過を見ることを推奨する。 〔推奨度1B〕推奨2髄芽腫治療後に経時的に認知機能障害は進行し,特に高リスク群と低年齢(7歳以下)でその傾向が強いので特に注意して経過を見ることを推奨する。 髄芽腫治療の進歩によって長期生存が得られるようになると,さまざまな晩期障害が認められるようになった。小児がん患者全体を対象とした長期生存者に対する長期フォローアップの指標はいくつか発表されており,例えば海外のものではCOGのガイドライン(http://www.survivorshipguidelines.org)があり,国内でも日本小児がん研究グループ(Japan Children’s Cancer Group:JCCG)の小児がん長期フォローアップガイドがある。また,妊孕性に関しては日本癌治療学会のガイドライン(http://www.jsco-cpg.jp/fertility/) がある。髄芽腫治療後のフォローアップの指標としても参考となる。 今回はあくまで髄芽腫の治療による晩期障害に焦点をあてて推奨を作成した。晩期障害からみて,髄芽腫のフォローアップで特に注意すべき場合がどのような症例かを検討した。晩期障害に関する文献は,髄芽腫以外の小児脳腫瘍も含むものが多く,ほとんどが後方視的な検討であり,それらは参考として,本推奨は髄芽腫の治療による晩期障害の前方視的コホート研究を中心にまとめた。 1990年代のPOG8631の知的予後に関する報告1)は3歳以上の髄芽腫で残存腫瘍が1.5 cm2未満の22例において,全脳脊髄の照射量36 Gy/23.4 Gyと8.85歳を基準としたyounger/olderで4群に分類し,IQを比較したものである。症例数も少なくそれぞれの群間で有意差は出ておらず,また縦断的研究ではなく,ワンポイントでの評価ではある。いずれの群でも単にFull scale IQが低下していることは示しているが,その原因が何であるのかには言及していない。この研究では評価方法としてはWISK ⅢもしくはWAIS-RをIQの評価として用いており,学習能力評価としてWide Range Achievement Test Ⅲを用いている。246 髄芽腫課題7:治療による晩期障害CQ 10髄芽腫に特徴的な晩期障害とそれをきたしやすい背景因子は何か?解 説〔推奨度1C〕
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