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 中枢神経原発胚細胞腫瘍を疑う症例では,血液と,可能な場合は同時に髄液中の腫瘍マーカー(AFP,HCG)を測定することが推奨される。 中枢神経原発胚細胞腫瘍の診断において,典型的な画像所見と臨床所見を呈した場合,まず行う検査が腫瘍マーカーの測定である。中枢神経原発胚細胞腫瘍の典型的な画像所見とは,神経下垂体,松果体またはその両者における造影効果を伴う病変の存在であり,CT画像における石灰化病変は奇形腫の存在を疑わせる所見である。また,典型的な臨床所見としては,神経下垂体に発生した場合は尿崩症を含めた内分泌異常による症状や視力・視野障害が,松果体に発生した場合は閉塞性水頭症の他にParinaud徴候やArgyll-Robertson瞳孔がみられやすいことが挙げられる1)。 ただし,ランゲルハンス細胞組織球症などでもHCGの上昇を認めることがあり,特に軽度上昇例においては注意が必要である2)。そのため,顕著な上昇例以外は組織採取による病理診断が推奨される(CQ2参照)。HCGの上昇例はジャーミノーマが考慮され,それが高値を示す症例は絨毛癌が疑われる。AFPの上昇は特に卵黄囊腫瘍でみられる。未熟奇形腫や胎児性癌ではHCGとAFPの上昇を示すことがある3)。しかし,組織診断が不要となるようなHCGとAFPの顕著な上昇,あるいは著しい高値が,具体的にいくつ以上を示すのかについては定説がない。 中枢神経原発胚細胞腫瘍を他の腫瘍と鑑別するため,またnon-germinomatousgermcelltumor(NGGCT)をジャーミノーマから鑑別するための腫瘍マーカーの適切な基準値については多くの報告があるが,これも現状では国や施設によって異なり,国際的に共通した基準値のコンセンサスは得られていない。しかし,化学療法,放射線療法に対する腫瘍の反応性の指標として腫瘍マーカーの推移が有用とする報告は認められている4—7)。ジャーミノーマとNGGCTを鑑別する世界的に代表的な腫瘍マーカーの基準を表1に示す。一方,MatsutaniらはNGGCTの中の高度悪性群に関しては腫瘍マーカーの組織診断なしに診断してよい基準値を一部設けているものの,ジャーミノーマとの鑑別に関しての明確な腫瘍マーカーの基準値は設けていない1)。表1のMatsutaniらの分類では,欧米で推 奨中枢神経原発胚細胞腫瘍では,腫瘍マーカー(AFP,HCG)を測定することを推奨する。〔推奨度1A〕 56  中枢神経原発胚細胞腫瘍(CNS germ cell tumor)課題1:診断,分類CQ 1中枢神経原発胚細胞腫瘍における腫瘍マーカー(AFP,HCG)の測定は有用か?解 説

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