益害5システマティックレビューの考察・まとめ(5)疼痛 浸潤性乳がん患者で一次予防投与としてG‒CSFを用いた場合の疼痛についてRCTは4編3,4,6,7)あり,重大な非直接性やバイアスは認めなかった。いずれの試験でも疼痛の発症率について,検定は行われていないが,G‒CSF併用群で疼痛の頻度が高い傾向がみられた。術後TC療法に対するG‒CSFの有効性を評価した第Ⅲ相RCTでは,骨痛の発症率はG‒CSF群と非G‒CSF群でそれぞれ6.4%と2.3%と報告されている4)。また,術前FEC療法を用いた試験においては,骨痛の発症率はG‒CSF群と非G‒CSF群でそれぞれ49%と8%と報告されている3)。これらの試験では重大な非直接性やバイアスは認められなかった。メタアナリシスは行われていない。(1)益 本CQでは,G‒CSFの一次予防投与の有用性を評価するため,益のアウトカムとして「全生存期間(OS)」「発熱性好中球減少症発症率(FN発症率)」を重要視した。OSを評価しているRCTは1編のみであり,また検定が行われていないことから,OSの改善は明らかではない。一方,FN発症率については,RCT 5編のメタアナリシスを行い,RD 0.22(95%CI:0.01‒0.43,p=0.04)と,有意に一次予防投与によるFN発症率の低下が示された。これらの試験で重大なバイアスは認めていなかった。FN発症率の低下自体が重要なアウトカムであると考えられるため,益を有すると判断した。よく管理された複数のRCTの結果に基づいていることから,エビデンスの強さは強いと判断した。レジメンに関しては,今回のシステマティックレビューではTC療法,アントラサイクリン系抗がん薬を含むレジメン,FEC100療法,DTX100療法,EC(120/600)療法を用いたRCTが採用されていた。システマティックレビュー全体の結果と各RCTの結果から,TC療法,FEC100療法,DTX100療法の際に一次予防投与の益があると考えられた。(2)害 浸潤性乳がん患者で一次予防投与としてG‒CSFを用いた場合の疼痛について評価している4編のRCTでは,G‒CSF併用群で疼痛の頻度が高い傾向がみられたものの,検定は行われておらず,エビデンスの強さは限定的である。(3)患者の価値観・好み 患者の価値観・好みについて,エビデンスに基づく評価はできていないが,FN発症率を低減させるなどの望ましい効果や,疼痛などの望ましくない効果の受け止め方にはばらつきがあり得ることを考慮した。(4)コスト・資源 コスト・資源について,エビデンスに基づく評価はできていないが,G‒CSF使用によってコストが30 Ⅲ.一次予防投与エビデンスの強さB(中)(4)生活の質(QOL) QOLを評価した研究は抽出されなかったため,評価不能とした。
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