解 説 乳がんに対し,再発リスク低下やOSの延長を目的としたがん薬物療法を行う際,G‒CSFの一次予防投与は,FN発症率を低下させることが示されており,強く推奨される。特に,TC療法(ドセタキセル+シクロホスファミド),FEC100療法,DTX100療法の際に一次予防投与が強く勧められる。しかし,G‒CSFの一次予防投与によるOSの改善は明らかではなく,また骨痛の発症率が高まる傾向がある点に留意すべきである。1本CQの背景 乳がんに対しては,術後再発リスクの低下やOSの延長を目的として,アントラサイクリン系抗がん薬やタキサン系抗がん薬など様々なレジメンが用いられる。G‒CSFの一次予防投与を行わなかったときに,FNが生じるリスクが比較的高いと考えられるレジメンとして,TC療法,TAC療法,FEC療法などがあり,実地診療ではこれらのレジメンに対してG‒CSFの一次予防投与が行われることが多いと考えられる。2アウトカムの設定 本CQでは,がん薬物療法を受ける乳がん患者を対象に,G‒CSFを一次予防投与で用いる場合と用いない場合を比較して,「全生存期間(OS)」「発熱性好中球減少症発症率(FN発症率)」「感染による死亡率」「生活の質(QOL)」「疼痛」の5項目について評価した。特に,アウトカムとして,「全生存期間(OS)」「発熱性好中球減少症発症率(FN発症率)」「疼痛」を重要視した。3採択された論文 本CQに対する文献検索の結果,PubMed 383編,Cochrane 1編,医中誌60編が抽出され,計444編がスクリーニング対象となった。2回のスクリーニングを経て抽出された8編を対象に定性的システマティックレビュー,うち5編についてメタアナリシスを実施した。8編のうち7編は術前または術後28 Ⅲ.一次予防投与推奨の強さ:1(強い) エビデンスの強さ:A(強い)合意率:90.9%(20/22名)推 奨乳がんのがん薬物療法において,G‒CSFの一次予防投与を行うことを強く推奨する(CQ)乳がんのがん薬物療法において,G‒CSF の一次予防投与は有用か?Q1
元のページ ../index.html#2