114推奨の強さ:弱い エビデンスの強さ:B 合意率:94%(16/17)ステートメント審査腹腔鏡は過小評価となる可能性があるものの,安全に腹膜播種を診断し非治療的開腹術を回避し得るステージングツールとして有用であり,大腸癌腹膜播種の診断において審査腹腔鏡を行うことを弱く推奨する。益試験開腹の回避害侵襲的診断,コスト審査腹腔鏡は消化器癌における潜在的な腹膜転移を確認するためのステージングツールとして幅広く行われている。しかしその報告のほとんどは後方視的研究であり,対象癌腫,適応,可視化の定義等が異なり直接の比較は困難である。また,多くは腹膜再発疑診あるいは腹膜再発症例に対する完全減量手術(CRS)+腹腔内温熱化学療法(HIPEC)の適応を評価する術前検査としての意義が検証された報告である。過去の報告は胃癌や卵巣癌などを含めた他がん種を対象としたものがほとんどであり,Carboniらは,744例(卵巣癌,胃癌,大腸癌など)を対象に審査腹腔鏡の有用性を後方視的に評価した。手術既往は68%に認められたが99.7%に完遂し,合併症は0.8%,死亡例はなかった。CRS+HIPECの適応と判断された49.7%に手術が行われ,CC(completeness of cytoreduction)-0/1は91.9%に達成された1)。他の報告でも,対象症例の手術既往割合は68.0〜90.3%,開腹移行率は2.2〜21.2%,腹腔鏡完遂率は88.0〜100%,合併症発生率は0〜6.2%と良好な成績が報告されている2-7)。近年,大腸癌症例を対象とした報告が散見されるようになった8-11)。Hentzenらは腹膜再発を疑う大腸癌症例184例に対してルーチンで審査腹腔鏡を行い,77.2%の手術既往患者に対し,13.0%に開腹移行を要したものの腹腔内検索は全例に施行され,75.0%に良好な腹腔鏡評価が可能であったと報告している。術後合併症は2.7%,術後死亡はなく,91例(49.5%)にCRS+HIPECが施行され,そのうち非治療的試験開腹術が16例(18%)に行われたが,陽性反応的中率は82%と良好であった9)。非治療的試験開腹術による術後合併症は12〜23%と比較的高率で,入院期間の延長7),その後の全身化学療法開始の遅延となることから回避できることが望ましい。審査腹腔鏡の陽性反応的中率(PPV)は63.0〜97.0%であり,18.0〜51.2%の非治療的試験開腹術を回避できる可能性が指摘されている1-10)。しかし一方で,開腹手術と比較し審査腹腔鏡ではPCIを過小評価する可能性が指摘されている4, 10)が,CRS+HIPECが普及していない本邦においてはPCI評価の正確性まで求め 解説CQ2大腸癌腹膜播種の診断において審査腹腔鏡を推奨するか?
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