34推奨の強さ:弱い エビデンスの強さ:B 合意率:100%(15/15)ステートメント高度腹膜転移による経口摂取不能または大量腹水を伴う胃癌では,全身状態を慎重に評価したうえでがん薬物療法を行うことを弱く推奨する。益生存期間の延長,症状の緩和害有害事象,治療関連死亡高度腹膜転移による経口摂取不能または大量腹水を伴う胃癌では,全身状態の悪化を伴うことが少なくないため,がん薬物療法の適応を慎重に検討する必要がある。切除不能進行・再発胃癌における一次化学療法の標準治療はフッ化ピリミジン製剤とプラチナ系製剤の併用療法であるが,かかる対象においては耐用不可であることが少なくない。CQ8で解説したJCOG0106試験1)からは肉眼的腹膜播種を有する胃癌における標準治療は5-FU ci療法とされたが,毎回入院が必要であることなどから,実臨床においては5-FU/LV療法がその代替として用いられることが多かった。高度腹膜転移による経口摂取不能または大量腹水を伴う胃癌症例に対し5-FU/LV療法を行うことにより27%に経口摂取の改善を認めたことが報告されている2)。さらに5-FU/LVにパクリタキセル毎週投与法を加えたFLTAX療法が開発され,高度腹膜転移による経口摂取不能または大量腹水を伴う胃癌症例において,腹水に対する効果を44%に認めたと報告された3)。この結果を受けて,5-FU/LV療法を対照群,FLTAX療法を試験群とした比較第II/III相臨床試験が本邦で行われた(JCOG1108/WJOG7312G試験)4)。FLTAX療法は5-FU/LVに対しOSにおいて優越性を示せなかった(mOS:7.3カ月vs. 6.1カ月,HR:0.79,p=0.1445)がPFS(mPFS:5.4カ月vs. 1.9カ月,HR:0.64,p=0.029)やQOLは優れていた。ただし,PSが2で経口摂取不能かつ大量腹水を有する症例は両群において早期死亡が多く報告され,途中から不適格に変更されている。これらの試験結果より高度腹膜転移による経口摂取不能または大量腹水を伴う胃癌においても,生存期間の延長や症状の改善につながる可能性があるためがん薬物療法を行うことを弱く推奨する。ただし,PS不良例に対してはがん薬物療法を行うことは推奨されない。FOLFOX療法は内服薬を含まないため,経口摂取不能症例においても使用可能であり,有効性を示唆する報告が複数見られる5-7)が,現時点では推奨されるレジメンではない。最近,高度腹膜転移による経口摂取不能または大量腹水を伴う胃癌を対象にした第II相試験 解説CQ9高度腹膜転移による経口摂取不能または大量腹水を伴う胃癌に対して 化学療法を推奨するか?
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