1-1 3され数回改定を繰り返したものが既に存在し,各がん種全般における診断治療の指針となっているが,腹膜播種に関する記載は比較的少なく,腹膜播種に特化した診断治療指針を提示することは意義があると考える。各がん種の現行ガイドラインとの間に一部内容に相違がある部分が存在するが,エビデンスレベルの判定や保険適用に関連するスタンスが異なることによるものと考えていただきたい。本ガイドラインの策定は「日本腹膜播種研究会」が主体として行った。腹膜播種を来す疾患別に,胃癌,膵癌,大腸癌(腹膜偽粘液腫を含む),卵巣癌および全がん種に共通する癌性腹水を扱う5個のサブセクション(領域)に分け,各班の委員長および委員会メンバーが同理事長によって任命され,2017年12月に改訂された「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」1)に準じて,2020年1月から作業を開始した。折からのCOVID-19感染対策のため,委員全員が集合して意見交換をする機会を作ることが難しかったため,セクションごとにオンライン会議を開き,作業方針を確認し,「診断」「外科治療」「化学療法」等の小委員会に分かれて作業を行い,Web上で随時討議を重ねた。領域ごとに,最初に,言葉の定義,診断,治療に関する基本的事項を総説としてまとめた。次に,日常診療で判断に迷うテーマ,特に腹膜播種診療に特有な事象をCQとして抽出した。腹膜播種は,転移・再発がんの中でも特殊な病態であり,様々なアプローチでの診断・治療がなされてきた経緯があるため,ハイレベルのエビデンスに基づいた明確な推奨の判断が難しいと思われる課題に関しても積極的にCQとして取り上げ検討することにした。これらのCQに対して数個の益と害のアウトカムを設定,関連するキーワードから文献検索を行い,重要なアウトカムごとにシステマティックレビューを行い,益と害のバランスを考慮して推奨案を小委員会で決定した。文献検索,システマティックレビューに当たっては特別なチームは設けず,各セクション策定委員と協力者で実施した。この結果を基に,担当委員が解説文とともに推奨案を各セクション全体会議に提案し,推奨決定会議での議論ののち投票を行い,推奨度の最終決定とした。すべてのCQに関して,関連するキーワードを設定し,原則として2000年以降~2020年までのPubMedをデータべ―スとして網羅的検索を行った。ヒットする論文数の少ない一部のCQに関しては,検索期間外のPubMed,医中誌の論文,ASCO Proceedingの追加検索,ハンドサーチによる論文も追加検討した。各CQについて益と害のアウトカムを抽出し,各アウトカムごとにまとめられた個々の文献について研究デザイン(介入研究,観察研究)ごとに「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」1)を参考に,各論文の示すエビデンスレベル(表1)を決定した。これら5.本ガイドラインの策定手順(1)ガイドラインの構成と作業骨子(2)エビデンスの収集方法(3)システマティックレビューとエビデンスの強さの決定
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