2本ガイドラインの主たる目的は,腹部に発生する悪性腫瘍により腹膜播種を来した患者に対する診断,治療に関する情報を整理するとともに,播種診療に関わる臨床的な疑問に対する推奨度を明らかにし,わが国における腹膜播種を有するがん患者の生存期間と生活の質(QOL)の向上に貢献することである。そこで,腹膜播種治療に関わる医師のみならず,医師以外の医療従事者,患者およびその家族が診療の概要を良く理解し,良質な医療を提供,享受できる医療環境を創出することを目指して本書を作成した。また,十分なエビデンスが得られていない研究テーマを明らかにすることで将来の臨床研究の促進につながることを期待する。本ガイドラインの想定される主な利用者は,腹膜播種を有する悪性腫瘍患者の診療に携わる消化器外科医,腫瘍内科医,婦人科医などの臨床医をはじめとして,看護師,薬剤師などの医療従事者であるが,専門外の一般臨床医や医療従事者に加えて,患者や家族をはじめとする腹膜播種治療に関心を有する一般市民をも対象となることを想定して作成した。本ガイドラインは,あくまでも作成時点までに国際的学術雑誌に掲載された文献上のエビデンスをベースにして検討した有益な治療を行うための指針であり,実際の診療行為を強制するものではない。特に,高度な侵襲を伴う手技に関しては,施設の設備状況や人的資源に加え,個々の患者の個別性に応じて方針を決定すべきである。したがって,本ガイドライン作成委員会は,記述内容に関しては本研究会が責任を負うが,診療結果に対する責任は負わない。また,本ガイドラインでは,腹膜播種の診断,治療に関して保険適応外の選択肢も含めて学術的な評価を行った。これらの保険適用外の診療項目を取り上げたCQにおいては,ステートメントあるいは解説文にてその旨を明記することにしたので,自費診療になる場合は相応の費用負担があることを前提として本ガイドラインをご利用していただきたい。本ガイドラインで取り上げる各がん種の診療ガイドラインは,2000年以降に初版が作成1.本ガイドラインの目的2.本ガイドラインの対象者3.本ガイドラインを使用する際の注意事項4.既存ガイドラインとの関係1-1本ガイドラインについて
元のページ ../index.html#2