このように,切除不能進行再発MSI—H大腸がんに対するペムブロリズマブの有効性は確
立されており,適応判定を目的としたMMR機能欠損を判定する検査は強く推奨される。後
述するように,MSI—H大腸がんは切除不能症例ではBRAF V600E変異の有無に関わらず予
後不良と報告されている。有力な治療の機会を逃さないためにも切除不能進行再発大腸がん
の治療経過において早い段階でのMMR機能欠損を判定する検査が推奨される。また,MMR
機能欠損は,RAS/BRAF変異と相互排他性ではないため,遺伝子型に関わらずMMR機能
欠損を判定する検査の実施が推奨される。また,大腸がんではMMRステータスの経時的変
化は報告されておらず,病理組織材料の有効活用,コストの観点からRAS/BRAF変異検査
と同時にMMR機能欠損を判定する検査を行うことが効率的である。
最近,免疫チェックポイント阻害薬の有効性は,切除不能進行再発大腸がんの一次治療に
おいても報告されつつあり
9
,現在第Ⅲ相試験(KEYNOTE—177)が進行中である。その結果
によっては一次治療への適応拡大の可能性もあり,同時に一次治療開始前から治療選択を目
的としたMMR機能欠損を判定する検査が必要となるかもしれない。
サイドメモ1
StageⅣ大腸がんとMMRステータス
StageⅣ大腸がんにおいて,dMMRは欧米では5—11%
10,11
,本邦では約2%
12,13
に認め,予
後不良因子である。例えば,切除不能進行再発大腸がんを対象とした第Ⅲ相試験の統合解析
において,dMMRはpMMRと比較し予後不良(13.6カ月vs 16.8カ月,HR 1.35(95%CI
1.13—1.61))であった
10,11
。BRAF V600E変異の有無と合わせた解析では,MMRステータス
にかかわらずBRAF V600E変異が強い予後不良因子であったが,BRAF V600E野生型では,
dMMRはpMMRと比較し予後不良であり,無増悪生存期間も短い傾向にあった(
表2
)。
一方,切除不能進行再発dMMR大腸がんに対する化学療法の効果は,pMMRと比較して
奏効割合が良好な傾向(オッズ比(odds ratio;OR)0.81(95%CI 0.65—1.03))とする報告
や
14
,5—FUに抵抗性となった後の二次治療としてのイリノテカンの奏効割合が良好とする報
告もあるが,統一した見解は得られていない
15
。したがって,MMRステータスにかかわらず
切除不能進行再発大腸がんに対して一般的に選択される化学療法すべてが適応となり得るも
のの,予後予測を目的としてBRAF V600E変異検査とあわせてMMR機能欠損を判定する
検査を実施することが考慮される。
4 ミスマッチ修復機能欠損を判定するための検査
29
表1 切除不能進行再発dMMR大腸がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の効果
著者
試験名
Phase
免疫チェック
ポイント阻害薬
対象
N
RR
(%)
PFS
(M)
OS
(M)
Le DT, et al
5
KEYNOTE
‒016
Ⅱ
Pembrolizumab
MSI
‒H
11
40
未達
未達
MSS
21
0
2.2
5
Le DT, et al
16
KEYNOTE
‒016
Ⅱ
Pembrolizumab
MSI
‒H
40
52
未達
未達
Dung L, et al
6
KEYNOTE
‒164
(コホートA)
Ⅱ
Pembrolizumab
MSI
‒H/dMMR
61
27.9
未達
未達
Overman MJ, et al
8
CheckMate
‒142
Ⅱ
Nivolumab
MSI
‒H/dMMR
74
31.1
14.3
未達
Overman MJ, et al
8
CheckMate
‒142
Ⅱ
Nivolumab
+
Ipilimumab
MSI
‒H/dMMR
119
54.6
未達
未達
RR:奏効割合,PFS:無増悪生存期間,OS:全生存期間,M:month