MMR機能欠損大腸がんにおける腫瘍微小環境の免疫学的機構

 dMMR大腸がんは,DNA複製エラーに伴い高度変異性(hyper—mutated type)を生じ,
免疫原性の高い変異がネオアンチゲンとして細胞表面に表出される確率が高まるとともに,
Tリンパ球の賦活化を認める。その結果,腫瘍や微小環境に対する浸潤性CD8+T細胞の有
意な増加を認め,MSSおよびpMMR大腸がんと比較し予後良好な一因と考えられる

2,3

。一

方でdMMR大腸がんは,腫瘍細胞のPD—L1発現を上昇させ,腫瘍免疫を回避することが報
告されている

4

。このように,dMMR大腸がんはミスマッチ修復機構の破綻による高免疫原

性に加え,免疫寛容機構も獲得しており,免疫チェックポイント阻害薬が有効性を示す理由
と考えられる。

切除不能進行再発大腸がんにおけるMMR機能欠損を判定する検査の臨床的意義(

表1

 抗PD—1抗体薬ペムブロリズマブは,既治療の切除不能進行再発大腸がんを対象とした第
Ⅱ相試験(KEYNOTE—016試験)において,MSSでは奏効例を認めなかったの対し,MSI—
Hでは40%の奏効割合を認めた

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。また,既治療の切除不能進行再発MSI—H/dMMR大腸が

んを対象としたペムブロリズマブの第Ⅱ相試験(KEYNOTE—164試験)のうち,三次治療以
降を対象としたコホートAでは,登録された61例において奏効割合27.9%(95%CI 17.1—
40.8%),12カ月無増悪生存率34.3%,12カ月全生存率71.7%を示し,日本人集団における
サブグループ解析においても7例中2例の奏効例を認め,2例ともに10カ月以上の長期生存
が確認された

6,7

。これらの結果から,本邦では2018年12月にMSI検査キット(FALCO)を

コンパニオン診断薬として,大腸がんを含むMSI—H固形がんに対するペムブロリズマブが
薬事承認された。治療ラインについては承認申請がコホートAのデータで行われたため,

「フッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤,オキサリプラチン及びイリノテカン塩酸塩水和物によ

る治療歴のない患者における本剤の有効性及び安全性は確立していない」と添付文書の効
能・効果に記載されている。しかし,KEYNOTE—164試験では,二次治療以降を対象とした
コホートBでも有効性(奏効割合32%)が示されており,二次治療以降での使用が考慮され
る。また,抗PD—1抗体薬ニボルマブも切除不能進行再発MSI—H/dMMR大腸がんを対象と
した第Ⅱ相試験(CheckMate142試験)において,奏効割合31.1%(95%CI 20.8—42.9%),
無増悪生存期間中央値14.3カ月を示している

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基本的要件

切除不能進行再発大腸がん患者に対し,免疫チェックポイント阻害薬の適応判定を目的として,
投与前にミスマッチ修復機能欠損を判定する検査(MMR機能欠損を判定する検査)を実施する。

免疫チェックポイント阻害薬の適応を判定するためのMMR機能欠損を判定する検査は,コンパ
ニオン診断薬を用いて実施する。

推奨度

強く推奨する[SR 10名]

4.2

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