推 奨
プラチナ製剤の投与を弱く推奨する。
〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:弱,合意率:79%(15/19)〕
転移・再発トリプルネガティブ乳癌は予後不良の病態であるが,その一方で化学療法薬に対す
る感受性が高いとされている。DNA傷害性化学療法薬がトリプルネガティブ乳癌に有効で,プ
ラチナ製剤の効果も報告されており
1)
,コクラン・レビューでもプラチナ製剤の有効性が示唆さ
れた
2)
。この項では,転移・再発トリプルネガティブ乳癌に対するプラチナ製剤を含む治療と含
まない治療を比較した臨床試験を検索して検討した。
一次治療として,ドセタキセル+シスプラチンとドセタキセル+カペシタビンを比較した単施
設でのランダム化第Ⅱ相試験(N=53)では,主要評価項目であるORRがドセタキセル+シスプラ
チンで有意に高く,PFSやOSも有意に勝っていた
3)
。
一次治療でのシスプラチン+ゲムシタビンの,パクリタキセル+ゲムシタビンに対するPFSの
非劣性と優越性を検証したランダム化第Ⅲ相試験(CBCSG006試験)が240例を対象に行われた
4)
。
PFSでのシスプラチン+ゲムシタビンの優越性が示され,ORRも有意差を認めたが,OSに差は
なかった。
トリプルネガティブ乳癌ないしgermline BRCA1/2遺伝子変異陽性乳癌を対象に,ドセタキセ
ルに対するカルボプラチンのORRの優越性を検証するTNT試験が376例を対象に行われた
5)
。
43例(11%)のBRCA1/2遺伝子変異陽性例を含めたintent to treat解析では,主要評価項目であ
るORRに差がなく,PFSやOSにも差を認めなかった。
一次治療としてパクリタキセル(アルブミン懸濁型)
(nab‒P),カルボプラチン(C),ゲムシタビ
ン(G)の3剤のうち2剤同士の併用療法を比較したランダム化第Ⅱ相試験(tnAcity試験,N=191)
では,主要評価項目であるPFSがnab‒P/C併用でnab‒P/G併用よりも有意に延長した
6)
。OSも
nab‒P/Cで長い傾向にあり,ORRもnab‒P/Cで高かった。
4つの試験のうちTNT試験では他試験と異なる統計解析手法が採用されているため,OSと
PFSのメタアナリシスは残りの3試験で,ORRと毒性に関しては4試験すべてで行った(図1)。
その結果,OSとORRはボーダーラインではあるが,プラチナ製剤の有効性が示され,PFSはプ
ラチナ製剤で有意に改善した。TNT試験では,カルボプラチンとドセタキセルでOSに差がない
との結果であったことから,予後不良な転移・再発トリプルネガティブ乳癌治療で最も重要なOS
に関する優越性のエビデンスは弱いが,プラチナ製剤が他化学療法薬に劣ることを示す報告はな
転移・再発トリプルネガティブ乳癌に対してプラチナ製
剤は勧められるか?
CQ
28
●
背景・目的
解 説
CQ 28
53
薬物療法