ラチンを加えたレジメンのハザード比は1.06(95%CI 0.40-2.81)と,FF療法を上回る結果
は得られなかった。しかし2つのレジメンは必ずしも同一な治療法ではないこと,
PANCREOXでは両群患者数128例に達していなかったことから,オキサリプラチン併用の
意義についての結論は得られていない。
イリノテカン塩酸塩のナノリポソーム化製剤であるMM-398(nanoliposomal irinotecan,
わが国では保険未収載)とFF療法の併用(FF+MM-398併用療法)がFF療法に比べて明ら
かに延命効果を示した第Ⅲ相試験の結果が公表された
4)
。FF療法とMM-398の比較ではFF
療法の全生存期間中央値4.2カ月に対してMM-398は4.9カ月(ハザード比0.99,p=0.94),
FF療法とFF+MM-398併用療法の比較ではFF療法の全生存期間中央値4.2カ月に対して
FF+MM-398併用療法は6.1カ月(ハザード比0.67,p=0.012)であった。本試験は当初FF
療法とMM-398単剤を比較する2群の試験として開始され,途中で試験デザインが変更され
FF+MM-398併用療法群が追加された。その結果,FF+MM-398併用療法はFF療法に対
して生存期間で延長を認め米国,欧州などでは承認されている。日本でもランダム化第Ⅱ相
試験が実施されたが結果は未発表である。
メタアナリシスの結果や試験デザインの問題は残るものの,FF療法よりも延命効果に優
れた化学療法(OFF療法ないしFF+MM-398併用療法)があり,BSCとの比較は十分では
ないが,ゲムシタビン塩酸塩後の二次化学療法の延命効果はほぼ確実と考えられる。
わが国ではこれまでS-1単独療法がゲムシタビン塩酸塩不応膵癌に対する実質的な暫定的
標準治療であった。S-1を対照としてS-1+イリノテカン塩酸塩併用療法,S-1+オキサリプ
ラチン併用療法,あるいはS-1+ホリナートカルシウム併用療法を比較したランダム化第Ⅱ
相試験が実施された
5-7)
。S-1+ホリナートカルシウム併用療法は第Ⅲ相試験まで進んだが
8)
,
延命効果を示すことはできなかった。海外ではルキソリチニブリン酸塩+カペシタビン併用
療法とカペシタビン,selumetinib+MK-2206併用療法とmFOLFOX療法を比較するランダ
ム化第Ⅱ相試験が実施されたが延命効果を示すことはできなかった
9,10)
。
以上より,ゲムシタビン塩酸塩関連レジメン後の二次化学療法として,フルオロウラシル
関連レジメンを行うことを提案する。具体的には,OFF療法,S-1単独療法が候補となる。
MM-398は生存期間においてFF療法への上乗せ効果が示されたが,わが国では保険未収載
である。
フルオロウラシル関連レジメン後の二次化学療法に関する比較試験はないが,一次化学療
法として確立しているFOLFIRINOX療法やS-1単独療法は,そのもととなるRCTにおいて
多くの患者が二次化学療法としてゲムシタビン塩酸塩単独療法を受けている
11,12)
。
FOLFIRINOX療法やS-1単独療法の優れた遠隔成績の一端はゲムシタビン塩酸塩による二
次化学療法が担っており,フルオロウラシル関連レジメン後の二次治療では,ゲムシタビン
塩酸塩が事実上の標準治療といえる。FOLFIRINOX療法不応膵癌に対する二次化学療法と
して,観察研究ではあるがゲムシタビン塩酸塩+ナブパクリタキセル併用療法の有用性を示
唆する論文が出されている
13)
。
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3.局所進行切除不能膵癌の治療法〔L〕