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.Stage 0~Stage Ⅲ 大腸癌の治療方針
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内視鏡的切除の目的には診断と治療の両面がある。本法は切除生検(excisional
biopsy)であり,切除標本の組織学的検索によって治療の根治性と外科的追加
腸切除の必要性を判定する。
(CQ 1)
2
cT1高度浸潤癌の診断指標として,「緊満感,びらん,潰瘍,ヒダ集中,変形・
硬化像」などの内視鏡所見,X線造影検査,色素内視鏡観察,NBI/BLIなどの
画像強調観察
6)
,拡大内視鏡観察,内視鏡超音波検査所見などを参考にす
る
7‒10)
。
3
内視鏡的切除後の治療方針の決定に際しては,切除標本の緻密な組織学的検索
が必須である。そのため,下記の点に留意する。
・ ポリペクトミー標本では切除断端に墨汁などによるマーキングを施し,切除
断端を含む最大割面を観察する。
・ EMR標本やESD標本では切除標本を伸展固定し,粘膜筋板と垂直な割面を
作製する。
・ 治療内容(切除法,併用療法の有無,一括切除か分割切除か,その選択理由
など)と切除標本の肉眼所見を記載することが望ましい。
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切除断端および最深部の癌浸潤状況を正確に診断するには,一括切除が望まし
い。
・ ポリペクトミーやスネアEMRで無理なく一括切除できる限界は2 cmであ
る
3)
。
(CQ 2)
・ 大腸のESDは,2012年4月に「早期悪性腫瘍」に対して保険適用が認可さ
れた「大きさにかかわらず一括切除が可能な内視鏡的切除手技」であるが,
技術的難易度が高く合併症(穿孔)の危険性が高いので,施行術者の技量を
考慮して施行する。径2~5 cmまでの病変が保険適用になっていたが,2018
年4月の改訂で腫瘍径の上限が撤廃され,また適応が最大径2 cm以上の早
期大腸癌となった。2 cm以下でも線維化を伴う早期大腸癌も適用になって
いる。
(CQ 2)
・ EMR using a cap(EMRC)は,結腸病変に用いると穿孔の危険性が高いと
する報告がある。
・ 術前診断で腺腫に伴う癌(粘膜内癌)と確信できれば癌部の分断を避け腺腫
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注1
ポリペクトミー
病巣茎部にスネアをかけて高周波電流によって焼灼切除する方法。主として隆起型病変
に用いられる。
注2
EMR
粘膜下層に生理食塩水などを局注して病巣を挙上させ,ポリペクトミーの手技により焼灼切除する
方法。スネア法
1)
,吸引キャップ法(EMRC)
2)
,などがある。主として表面型腫瘍や大きな無茎性病変に用
いられる。
注3
ESD
病変周囲,粘膜下層にヒアルロン酸ナトリウム溶液などを局注して病巣を挙上させ,専用のナイフで
病変周辺の切開,粘膜下層の剝離を進め腫瘍を一括切除する手技である
3)
。主として,EMRで一括切除で
きない大きな腫瘍,特に早期癌が適応である。
注4
Precutting EMR
ESD用ナイフあるいはスネア先端を用いて病変周囲切開後,粘膜下層の剝離を全く行わ
ずにスネアリングを施行する手技
5)
。
注5
Hybrid ESD
ESD専用ナイフあるいはスネア先端を用いて病変周囲切開後,粘膜下層の剝離操作を行い最
終的にスネアリングを施行する手技
5)
。