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Clinical Questions

大腸癌研究会が行った後方視的研究における650名の傾向スコア解析

581)

でも,生存期間のハ

ザード比は0.96(95%信頼区間0.78‒1.18,p=0.69)であり,両薬剤の有効性は同程度と考え
られることから,リスクとベネフィットを考慮したうえで選択することが望ましい。
 なお,両薬剤については,いくつかの新たな知見が報告されている。KRAS野生型の三次
治療以降において,REGとIRI+CETの投与順序を比較したランダム化第Ⅱ相試験

(REVERCE試験

582)

)では,REG先行群で全生存期間が有意に良好であった。また,FTD/

TPIとBEVの併用療法は,本邦で実施された第Ⅱ相試験にて良好な有効性が示唆されてい
る(C‒TASK FORCE試験

583)

。さらに,高齢者(緩徐な進行の肺転移単独例などを含む)を

対象に初回治療としてCape+BEV療法とFTD/TPI+BEV療法とを比較した第Ⅱ相試験

(TASCO‒1試験)では,FTD/TPI+BEV群で無増悪生存期間が良好な傾向を示した。しか

しながら,いずれも第Ⅲ相試験での有用性の検証が行われていない。

 DNAミスマッチ修復(mismatch repair:MMR)機能に欠損がある腫瘍(deficient MMR:
dMMR)は,高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)を示し,細胞内に体細胞変異の
蓄積をきたし(hypermutation),ネオアンチゲン数も多くなることから,免疫原性が高くな
り免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待される。一方,切除不能のdMMR/MSI-H大腸
癌は予後不良な傾向があり,フッ化ピリミジンを含む治療の有効性が乏しいことが報告され
ている。
 KEYNOTE‒016試験は,dMMR大腸癌,pMMR(proficient MMR)大腸癌,および大腸
癌以外のdMMR固形癌を対象に,抗PD-1抗体薬であるpembrolizumab(Pembro)の有効
性を検討した臨床Ⅱ相試験であり,奏効割合はdMMR大腸癌およびdMMR非大腸癌ではそ
れぞれ52%,54%であったのに対して,pMMR大腸癌では0%であった。同様に,病勢コン
トロール割合(disease control rate:DCR)はdMMR大腸癌およびdMMR非大腸癌では
82%,72%に対して,pMMR大腸癌では16%と,dMMRの癌では有効性が示された一方,
pMMR大腸癌では不良な成績であった

199)

。KEYNOTE‒164試験は1レジメン以上の前治療

歴を有するMSI-H大腸癌に対するPembroの臨床第Ⅱ相試験であり,奏効割合は28%,DCR
は51%であった

584)

。また,有害事象についてもGrade 3~4:15%(免疫関連有害事象5%を

含む)と忍容可能であった。これらの臨床試験を含む5試験の結果をもとに2017年5月に米
国食品医薬品局(FDA)はMSI-HまたはdMMR成人・小児固形癌に対するPembroを承認
した。抗PD-1抗体薬は高価であるが,KEYNOTE‒016のフォローアップの結果において18
カ月無増悪生存率が63%と高く曲線もほぼフラットになっている。また18カ月全生存率
74%は標準治療不応例としては非常に優れた成績である。さらなるフォローが必要ではある
が,MSI-H/dMMR(大腸)癌において抗PD-1抗体薬療法は長期生存が得られる可能性があ
り,コストに見合った効果があると考えられる。別の抗PD-1抗体薬であるnivolumabでも,
MSI-H/dMMR大腸癌に対する高い有効性が再現され,米国では承認されている(本邦未承

CQ 23

:大腸癌に免疫チェックポイント阻害薬は推奨されるか?

MSI-H

切除不能大腸癌既治療例に,抗PD-1抗体薬療法を行うことを強く推奨する。

(推奨

度1・エビデンスレベルB)