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BEV使用例が含まれていないという観点からはECOG3200試験やVELOUR試験で認められ
た血管新生阻害薬の併用効果が抗EGFR抗体薬後の二次治療としても期待できると考えられ
る。また,有効な治療薬を使い切るという観点からも,抗EGFR抗体薬後の二次治療として
も血管新生阻害薬の併用療法は推奨される治療と考える。一方,抗EGFR抗体薬の増悪後の
継続使用(beyond progression)は,その有効性に関するエビデンスが不十分で確立されて
おらず,副作用の観点から現時点では推奨されない。
Regorafenib療法(REG)およびtrifluridine(FTD)/tipiracil塩酸塩(TPI)単独療法
(TAS‒102,以下FTD/TPI)は,国際共同試験であるCORRECT試験
208)
およびRECOURSE
試験
210)
により,有用性が検証されている。両試験は,フッ化ピリミジン,OX,IRI,BEV,
抗EGFR抗体薬(RAS野生型の場合)のすべての治療に不応・不耐となったECOG PS 0ま
たは1の切除不能進行再発大腸癌患者を対象に,プラセボと実薬を比較した第Ⅲ相試験であ
る。両試験ともにプライマリーエンドポイントである全生存期間の有意な延長を示した
(CORRECT試験:中央値6.4 vs. 5.0カ月,ハザード比0.77,95%信頼区間0.64‒0.94,p=
0.0052;RECOURSE試験:中央値7.1 vs. 5.3カ月,ハザード比0.68,95%信頼区間0.58‒0.81,
p<0.001)。CORRECT試験では日本人患者100名が,RECOURSE試験では266名が登録さ
れ,両試験の日本人サブセット集団の安全性は忍容可能,生存期間の延長効果は全体集団で
の結果と同程度であった(CORRECT試験:ハザード比0.81;RECOURSE試験,ハザード
比0.75)
577,578)
。また,両試験と同様の試験デザインでの第Ⅲ相試験が東アジアでも実施され
(REGはCONCUR試験
579)
,FTD/TPIはTERRA試験
211)
),いずれも有意な生存延長効果
が再現されている。
有害事象として,REGでは手足皮膚反応,疲労,下痢,高血圧等の非血液毒性が,FTD/
TPIでは白血球・好中球減少症などの血液毒性の頻度が高く,有害事象のプロファイルが異
なる。以上より,REGおよびFTD/TPIはいずれも生存期間の延長が確認されており,副作
用に留意が必要であるが,推奨される治療である。なお,PS 2以上の患者に対してはREG
およびFTD/TPIのいずれも有効性・安全性は確立されておらず,治療適応外とし対症療法
を選択するのが望ましい。また,安全性を高めるため,REGについては,160 mg/日の標準
用量で治療を開始せず,80 mgあるいは120 mgから開始し副作用が軽度であれば増量して
いくストラテジーが試みられている。
REGおよびFTD/TPIのどちらが先に実施するのが良いかについては,両治療を直接比較
したRCTがないため,現時点では明らかではない。CORRECT試験,CONCUR試験,
RECOURSE試験の3試験を対象としたシステマティックレビュー内のネットワークメタア
ナリシスの結果では,全生存期間のハザード比は0.96(95%信頼区間0.57‒1.66,p=0.91)
580)
,
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: 切除不能大腸癌に対する後方治療としてregorafenib,FTD/TPIは
推奨されるか?
フッ化ピリミジン,oxaliplatin,irinotecanに不応または不耐(投与不適を含む)となった
場合の後方治療として,regorafenibおよびFTD/TPI療法を行うこと強く推奨する。
(推奨
度1・エビデンスレベルA)