維性結合織で取り囲まれる。まれに,乳管上皮または筋上皮の一方または両方が癌化す

ることがあり,悪性成分を伴う腺筋上皮腫あるいは悪性腺筋上皮腫として,悪性腫瘍に

分類される。

6.その他 Others

唾液腺型腫瘍(多形腺腫pleomorphic adenoma),皮膚付属器型腫瘍(アポクリン腺腫

apocrine adenoma,汗管腫様腫瘍syringomatous tumor)などがまれに認められる。

*異型上皮内病変atypical intraepithelial lesion(図13〜18)

癌の基準は満たさないが上皮に異型を伴う病変として,平坦型上皮異型(flat

epithelial atypia;FEA), 異型乳管過形成(atypical ductal hyperplasia;ADH),

異型小葉過形成(atypical lobular hyperplasia;ALH)がある。単独で,または良性

病変に付随して認められることがあり,浸潤性乳癌発生のリスク病変や前癌病変として

の意義が議論の対象となっている。

B.悪性腫瘍 Malignant tumors(Carcinomas)

本分類における乳癌分類の大綱は次のごとくである。

1)乳癌を非浸潤癌,微小浸潤癌,浸潤癌およびPaget病に大別する。

2)非浸潤癌を乳管癌と小葉癌,浸潤癌を乳管癌と特殊型にそれぞれ分ける。

3)浸潤性乳管癌はさらに腺管形成型,充実型,硬性型,その他の4つに分ける。

1.非浸潤癌 Noninvasive carcinoma

乳管小葉系にとどまり癌細胞が間質へ浸潤していないものをいう。

a.非浸潤性乳管癌 Ductal carcinoma in situ(DCIS)(図19〜26)

乳管内増殖を示す癌で,間質への浸潤がみられないものをいう。多種多彩な組織構

築を示し,代表的なものは乳頭型(papillary type),篩状-乳頭型(cribriform-papil-

lary type),篩状型(cribriform type),充実型(solid type),面疱型(comedo type)

である。アポクリン化生を伴うことがある。充実-乳頭型(solid-papillary type)は

神経内分泌への分化を伴うことが多い。

注1:Noninvasive ductal carcinomaと同義語である。
注2:

囊胞内癌(intracystic carcinoma)は非浸潤性乳管癌に含まれる。

注3:被包型乳頭癌(encapsulated papillary carcinoma)で明らかな間質浸潤を伴わない

ものは非浸潤性乳管癌に含まれる。浸潤を伴うものは,浸潤の程度により微小浸潤癌
あるいは浸潤癌に分類される。

第1章 乳腺腫瘍の組織学的分類

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