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びまん性星細胞系腫瘍の組織学的悪性度分類

最近の研究結果から分子遺伝学的な指標が従来の組織学的悪性度分類よりも正確な予後

情報を提供することが示唆されているものの,今回の改訂では悪性度分類に変更はなかっ

た。びまん性星細胞系腫瘍では前版と同一の3段階の悪性度分類が採用された。すなわち,

細胞異型のみがみられる場合はgradeⅡ,さらに退形成性と核分裂像を伴う場合はgrade

Ⅲ,さらに微小血管増殖または壊死を伴った腫瘍はgradeⅣとする。細胞異型とはクロ

マチンの増量を伴った核形や大きさの不整を指す。核分裂像は明確であるべきであるが,

形状や数は問わない。十分量の大きさの検体では一個の核分裂像はgradeⅢとするには

不十分であるが,Ki-67の標識率が補助となりうる。微小血管増殖とは血管壁細胞の重層

化あるいは糸球体係蹄様の構築を指す。壊死はどのような形態であってもよく,柵状配列

を必要としない。初期の壊死を示唆するような基質が淡明化した領域のみでは不十分であ

る。以上の診断項目は逐次的に生じるものと考えられる。すなわち,細胞異型,核分裂像,

細胞密度の増加,微小血管増殖あるいは壊死の順である。なお,乏突起膠細胞系腫瘍にお

いても悪性度分類の基本的要件は変更されていないものの,乏突起星細胞腫の消失に伴い,

glioblastomawitholigodendrogliomacomponent(GBMO)乏突起膠腫様成分を伴う膠芽腫

が削除されるなどの改訂が行われた(各腫瘍の項目を参照)。

ઃ.DiffuseastrocytomaIDH-mutantびまん性星細胞腫,IDH変異(図2-13〜17)

定義

:IDH1またはIDH2遺伝子変異を伴ったびまん性に発育・浸潤する星細胞腫であ

る。

星細胞腫としての明らかな分化,

中等度の多形性,

緩徐な発育を特徴的とする。

ATRX

変異とTP53変異の存在が本腫瘍の診断を支持する。

乏突起膠腫に類似した組織像が随伴

している場合でも,1p/19q共欠失の存在が否定されれば本腫瘍とする。WHOgradeⅡ。

組織型の解説とカラーアトラス

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2

Astrocytoma

IDH-mutant

ATRX loss*

TP53 mutation*

1p/19q codeletion

Diffuse astrocytoma,

IDH-mutant

Diffuse astrocytoma, IDH-wildtype

Oligodendroglioma, NOS

Diffuse astrocytoma, NOS

Oligodendroglioma, NOS

Oligoastrocytoma, NOS

Glioblastoma, NOS

Oligodendroglioma,

IDH-mutant and

1p/19q-codeleted

* = 特徴的ではあるが

診断には必須ではない

Glioblastoma, IDH-mutant

Glioblastoma, IDH-wildtype

IDH-wildtype

IDH-mutant

IDH-wildtype

Oligoastrocytoma

Oligodendroglioma

Glioblastoma

組織像

IDH変異

分子遺伝学的検査未施行または

判定困難

他のグリオーマを否定後:

1p/19q共欠失

図2-12

浸潤性グリオーマのWHO診断(The2016WorldHealthOrganizationClassificationofTumors
oftheCentralNervousSystem,IARCより改編)

組織像からIDH変異の有無とその他の分子遺伝学的因子からWHO診断に至る主な手順を示す。