はじめに

 ざ瘡様皮疹は,がん治療開始からおおよそ1カ月以内に発症し,急速に悪化する毛穴に一致
したニキビ様の皮疹を特徴とする。顔面だけでなく,頭部や体幹・四肢にも生じ,時にかゆみ,
ひりひり感や痛みを伴う。なお,鑑別診断としてニキビ(尋常性ざ瘡)があるが,治療歴と顔
面以外にも皮疹があることより鑑別する。

重症度評価

 ざ瘡様皮疹の重症度評価を「本アトラスについて」の表2,3(15,16頁)に示す。なお,表2
はCTCAE v4.0に準じているが,がん治療を継続するためには,患者の主観的な症状が最も重要
である。そこで,自覚症状や日常生活への影響〔日常生活動作(activities of daily living;ADL)〕
を重視し,実際にがん治療に関与するメディカルスタッフにも判断しやすいよう表3も併記した

1)

治療

 治療前からの正しいスキンケア指導は必須である。内服薬に関してはミノサイクリンは間質
性肺炎や肝障害の発現に注意し,100 mg/日の投与を行い3カ月を目途に休薬もしくは間欠投
与する。マクロライド系抗菌薬は分子標的薬の薬物血中濃度の上昇のリスクがあり注意を要す
る。また,テトラサイクリン系抗菌薬は予防的投与が推奨されている。
 外用薬に関しては,基本は副腎皮質ステロイド外用薬であるが,顔面は副作用が生じやすい
部位であり長期使用は避け,いったんランクアップしたとしても症状の改善を確認し,適宜ラ
ンクダウンする。

(軽症)

 副腎皮質ステロイド外用薬を用いる。部位により,medium~very strongの軟膏,クリー
ム,ローション基剤を選択する。頭部はローション剤,顔面・体幹は軟膏・クリーム剤が使い
やすいが,ローション剤やクリーム剤は時に刺激を感じることがあり,基剤選択にも留意する。
なお,ミノサイクリンの予防内服も有用である

2)

。原疾患の治療は継続可能である。

(中等症)

 軽症よりランクアップした副腎皮質ステロイド外用薬を用いる。なお,そう痒を伴う場合は,
抗アレルギー薬を併用するが,接触皮膚炎や白癬を併発していることがあり,悪化するときに
は皮膚科専門医の介入が必要である。なお,原疾患の治療は継続可能である。ミノサイクリン
100~200 mg/日内服が目安となる。

(重症)

 原疾患の治療薬を休薬のうえ,皮膚科専門医へ紹介する。基本的には,2週間を目安に副腎
皮質ステロイド薬を内服で投与する。

Grade 1

Grade 2

Grade 3

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第1章 EGFR阻害薬

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ざ瘡様皮疹