Ⅴ.壁深達度(T)
胃壁は,解剖学的に粘膜(粘膜筋板を含む),粘膜下組織,固有筋層,漿膜層(漿膜下組
織および漿膜表面)の4層に区分され(写真18),癌の壁深達度は癌浸潤の及んだ最も深
い層をもって表す。壁深達度はT分類で記載し,かつ胃壁各層や他臓器浸潤を表すM,
SM,MP,SS,SE,SIを記載する。臨床分類や病理分類を表すc,pの接頭辞はTにつけ
ることとし,M,SMなどには用いない(例:病理学的粘膜内癌はpT1aでありpMとは
しない)。なお粘膜Mは粘膜筋板MMを含む。多発病巣の場合は最深の腫瘍のTで代表
する。リンパ節転移の有無にかかわらず,T1腫瘍を「早期胃癌」と称する。
TX:癌の浸潤の深さが不明なもの
T0:癌がない
T1:癌の局在が粘膜
(M)
または粘膜下組織
(SM)
にとどまるもの
T1a:癌が粘膜にとどまるもの
(M)
T1b:癌の浸潤が粘膜下組織にとどまるもの
(SM)
T2:癌の浸潤が粘膜下組織を越えているが,固有筋層にとどまるもの
(MP)
T3:癌の浸潤が固有筋層を越えているが,漿膜下組織にとどまるもの
(SS)
T4:癌の浸潤が漿膜表面に接しているかまたは露出,あるいは他臓器に及ぶもの
T4a: 癌の浸潤が漿膜
表面に接しているか,またはこれ
を破って腹腔に露出しているも
の
(SE)
T4b:癌の浸潤が直接他臓器まで及ぶもの
(SI)
Ⅴ.壁深達度(T) 17
漿膜表面(S)
:surface of
visceral peritoneum
粘膜(M)
:mucosa
(Tunica mucosa)
粘膜筋板(MM)
:muscularis mucosae
(Lamina muscularis mucosae)
粘膜下組織(SM)
:submucosa
(Tela submucosa)
固有筋層(MP)
:muscularis propria
(Tunica muscularis)
漿膜層:serosa
(Tunica serosa)
漿膜下組織(SS)
:subserosa
(Tela subserosa)
写真18.胃壁断面組織像(胃体上部前壁)