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 切除不能進行・再発食道癌に対しては,全身化学療法が標準的に用いられる。無治療群との
比較試験による,明確な生存期間延長効果は示されてないものの,単剤,あるいは併用にて有
効性が報告されており,化学療法が標準的に用いられている。

 単剤では,5—FU,プラチナ系薬剤,タキサン系薬剤,ビンカアルカロイド系薬剤などが,
15~40%の奏効割合,3~10カ月程度の生存期間中央値が報告されている。併用療法は,単剤
に比して奏効割合が高く,20~60%と報告されている(表1)

1—3)

。2剤,あるいは3剤による併

用療法も多数報告があるものの,単剤との比較を行った報告は1編のみで,ほとんどが少数例
による第Ⅱ相試験の報告である。2剤併用療法として相乗効果が期待できるシスプラチン+5—
FUの併用療法,また,ネダプラチン+5—FUの併用療法が使用されている。これらの対象に対
してはシスプラチン+5—FUの併用療法が標準治療と考えられ,これにタキサン系薬剤を併用
した3剤併用療法の報告では,奏効割合60%と高い効果が示されているが

4,5)

,生存期間延長効

果については不明であり,現時点では臨床研究の一環として用いることが望ましい。現在シス
プラチン+5—FUの併用療法と,それにドセタキセルを2週間毎に併用した治療法の比較試験
が行われており(JCOG1314試験),その結果が待たれる。

 シスプラチンと5—FUが不応となった場合の二次治療において,明確な生存期間延長効果を
示した薬剤はない。フッ化ピリミジン系,プラチナ系以外の薬剤で,有効性を示した薬剤を用
いるべきであるが,毒性との益と害のバランスを考慮する必要がある(表2)。ドセタキセル
や,パクリタキセルなどのタキサン系薬剤が単剤で投与されることが多い

6,7)

。この対象に対す

る一次治療で用いた薬剤の再度投与,多剤併用療法

8)

の意義については明確になっていない。

 分子標的治療薬に関する報告は少ないが,EGFR阻害剤の報告があり,奏効割合は10~20%
と報告されている。腺癌を含めた食道癌二次治療患者に対してプラセボとEGFR(Epidermal 
Growth Factor Receptor)阻害剤であるゲフィチニブとの比較試験では,ゲフィチニブの有用
性は示されなかった

10)

。今後バイオマーカーなどの開発により,ある特定の対象での有用性が

 化学療法は食道癌治療における唯一の全身治療としてさまざまな場面で用いられる。
cStageⅠ—Ⅳの局所食道癌に対する化学放射線療法,術前化学療法や,切除不能進行・再発食
道癌に対して用いられる。切除不能進行・再発食道癌に対しては,生存期間延長に関する明
確なエビデンスはないものの,シスプラチン+5—FU併用療法が用いられている。これらが
不応となった場合の二次治療に関しても,タキサン系の薬剤などが用いられるが,少数例の
第Ⅱ相試験の報告に限られ,使用については慎重を要する。

要約

総論

1

一次治療において有効性が示されている薬剤,併用療法

2

二次治療において有効性が示されている薬剤,併用療法

切除不能進行・再発食道癌に対する

化学療法

VI