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5. 細胞診
が不明瞭で,厚い細胞質,細胞質の空隙を有することもある。構造的には細胞集塊の辺縁が平滑
な場合や,集塊辺縁からの核の突出,不規則な重積がみられる場合があり,非角化扁平上皮癌細
胞との鑑別点になる。標本上の一部に乳頭状集塊,微小乳頭状構造,シート状集塊,腺腔様構造,
円柱状細胞の柵状配列,印環細胞様形態がみられる場合は,腺癌を推定する重要な構造あるいは
細胞所見であるため,細胞所見欄に付記するのが望ましい。粘液様背景や粘液を有する細胞集塊
では,浸潤性粘液性腺癌やコロイド腺癌などが推定される。
微小乳頭型腺癌では,小型単調な細胞により形成される細胞集塊がみられ,構成細胞数が3~
20
個程度で,立体的で結合性の強い,花冠状ないし球状~桑実状の小型集塊という特徴を示す。
通常は,小型単調な細胞がシート状集塊ないし敷石状に出現する腺癌像の中に認められる。細胞
の多くは圧縮された感があり,周囲の細胞よりもさらに小型である。
浸潤性粘液性腺癌では,大型の平面的集塊で出現し,配列は規則的で極性がある。亀甲状や蜂
巣状を示すことがある。高円柱状の細胞,明瞭な細胞境界,細胞質内の粘液,核の切れ込みない
し「しわ」を認める。クロマチンの増量は軽度である。粘液様背景を認める。喀痰標本では比較的
図3.腺癌,擦過,中拡大
円柱状細胞の柵状配列がみられる立体的重積性集塊。
図4.腺癌,擦過,強拡大
ライトグリーン好性の細胞質。細顆粒状に増量したク
ロマチン,円形の核小体。
図1.腺癌,喀痰,中拡大
ライトグリーン好性の細胞質を有した立方状細胞が立
体的重積性集塊を形成。
図2.腺癌,喀痰,強拡大
泡沫状細胞質,細顆粒状クロマチン,明瞭な核小体を
有する細胞の腺様配列。