DC 3 

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疾患概念

CQ

DC 3 Borderline resectable膵癌とは何か?

ステートメント

1.日本膵臓学会膵癌取扱い規約委員会により『膵癌取扱い規約』

(第7版)が発刊され,

resectabilityは局所の浸潤の程度と遠隔転移の有無などによりresectable(切除可
能),borderlineresectable(切除可能境界),unresectable(切除不能)に分類す
ることが提唱された。Borderlineresectable膵癌は,表1の如く定義され,これ
を用いることを提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスレベル:B,合意率:100%〕

2.Borderlineresectable膵癌の診断には,造影MDCTにて評価することを推奨する。

〔推奨の強さ:1,エビデンスレベル:B,合意率:97.4%〕

3.微小肝転移ならびに腹膜播種の検出には,審査腹腔鏡が有用であるので,必要に応

じて施行し評価することを提案する。

〔推奨の強さ:2,エビデンスレベル:B,合意率:100%〕

[合意投票の経緯]

ステートメント2について,当初,「MDCT」であったが,「造影MDCT」として合意投票を行った。

解 説

1.Borderline resectable膵癌の定義

遠隔転移を認めない膵癌は,その局所進展度により,resectable膵癌,borderline resectable

膵癌,unresectable膵癌の3つに分類される 

1─3)

。Borderline resectable膵癌とは,外科的切

除を施行しても高率に癌が遺残し(組織学的癌遺残:R1,肉眼的癌遺残:R2),切除による

表1 Borderline resectable膵癌

BR

標準的手術のみでは組織学的に癌遺残のあるR1切除となる可能性が高いもの。
門脈系と動脈系の浸潤により細分する。

BR-PV

(門脈系への浸潤のみ)

SMA,CA,CHAの接触や浸潤の所見がないもので,SMV

/

PVと腫瘍との接

触が180度以上あるもの,あるいは,SMV

/

PVの閉塞を認めるが,浸潤の範囲

が十二指腸下縁をこえないもの。

BR-A

(動脈系への浸潤あり)

SMAあるいはCAに180度未満の接触があるが,狭窄・変形は認めないもの。
CHAの浸潤を認めるが,固有肝動脈やCAへの浸潤を認めないもの。

BR:borderline resectable(切除可能境界),CA:腹腔動脈,CHA:総肝動脈,PV:門脈,SMA:上腸間
膜動脈,SMV:上腸間膜静脈

〔日本膵臓学会 編.膵癌取扱い規約第7版,金原出版,2016. 

15)

より引用〕