各論 193
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はじめに
Irrinotecan(以下,CPT-11)は肺癌,胃癌,大腸癌,卵巣癌,子宮頸癌,非ホジキンリンパ
腫,有棘細胞癌,膵臓癌(FOLFIRINOX)などに保険適応されている薬剤である。CPT-11自
体はプロドラッグであり,生体内で抗腫瘍活性を呈するSN-38に変換して抗腫瘍効果をもたら
す。SN-38の解毒過程であるグルクロン酸抱合にはUDP-グルクロン酸酵素(UGT)の分子種
であるUGT1A1が関与している。UGT1A1には多数の遺伝子多型が報告されておりCPT-11
の薬物効果と有害事象に関与している。CPT-11は本邦では1994年に発売されたが,海外では
2005年に米国食品医薬品局(FDA)の勧告に基づきUGT1A1の遺伝子多型
*
28ホモ接合体を
有する患者にはCPT-11の開始投与量を少なくとも1ランク減量するように添付文書の改訂が
された。本邦でも2008年にUGT1A1
*
28に加えてアジア人で多い,UGT1A1
*
6についても
添付文書で重篤な有害事象の注意喚起されるようになった。本項ではUGT1A1遺伝子多型の
意義と有害事象対策を解説する。
CQ
1
日本人におけるUGT1A1
*
28および
*
6の頻度はどれくらいか?
Answer
UGT1A1
*
28は8.6~13%,
*
6は13~17.7%で日本人は
*
6が多い。
解 説
UGT1A1は肝臓において非抱合型ビリルビンをグルクロン酸抱合し,抱合型ビリルビンに変
換する律速酵素の1つである。UGT1A1遺伝子は歴史的に間接型有意の体質性黄疸である
Crigler-Najjar syndromeやGilbert syndromeの研究から解析が進められた。UGT1遺伝子は
染色体2p37に位置し,1つの遺伝子に存在する複数のexon 1と共通のexon 2-5から構成され
ており選択的スプライシングにより各分子種が発現する。exon 1はヒトでは偽遺伝子を含め13
種の遺伝子が同定され,共通exon 2-5に近い順から1A1, 1A2, 1A3……と命名されUGT1A1
表1
UGT1A1
*
6とUGT1A1
*
28との遺伝子多型
UGT1A1
遺伝子多型
*
28(8.6-13%)
TA6/TA6
TA6/TA7
TA7/TA7
*
6
(13-17.7%)
G/G
野生型
45-60%
*
28ヘテロ接合体
15-20%
*
28ホモ接合体
1-2%
G/A
*
6ヘテロ接合体
20-25%
複合ヘテロ接合体
4-5%
A/A
*
6ホモ接合体
2-3%
軽度リスク群
高度リスク群