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前コースでFNを生じた場合,次コース以降で予防的G—CSF投与の有効性について検討を
行う。
治癒を目的とした化学療法では,治療強度(dose intensity)の低下が生存期間の短縮につ
ながる可能性が示唆されている。Boslyらは,非ホジキンリンパ腫に対する化学療法を行った
240例について後ろ向きに検討を行い,治療強度の高い群と低い群とでは生存期間中央値がそ
れぞれ5.38年,2.24年であり,治療強度の低い群で有意に短かったことを報告した
1)
。このよ
うな知見に基づき,G—CSFの予防投与を行い治療強度を高めることで予後を改善することが期
待されている。
Riveraらは,乳がんに対する術後化学療法において1コース目にGrade 4の好中球減少をき
たした358例にG—CSFの二次予防的投与を行い,その有効性について検討を行った
2)
。ヒスト
リカルコントロールとの比較を行ったところ,二次予防的投与によりFNの発症率や入院率の改
善は認めなかったものの,治療強度の増加を認めた。
Guptaらは,前コースでFNを生じた50例に対し,抗がん薬の減量を行わずG—CSFの二次
予防的投与を行い,その有効性について検討した
3)
。この報告によると,二次予防的投与を行っ
たあとの1コース目でのFN発症率は64%,次コースでの発症率は14%,3コース目の発症率
は10%とコースを重ねるにつれて有意にFNを抑制することが明らかになり,さらに入院日数,
抗菌薬の使用率なども有意に抑制していた。
これらの結果から,抗がん薬の減量やスケジュール変更を行うことが望ましくない患者におい
て,前コースでFNを認めた場合,次コース以降でG—CSFの二次予防的投与を考慮することが
望ましいと考えられる。
ASCO・EORTC・NCCNのG—CSFガイドライン,日本臨床腫瘍学会のFN診療ガイドライン
でも同様の推奨がなされている。
2005年10月1日~2014年12月1日の文献を,PubMedで[#1:(neutropenia)OR(neu
tropenic),#2:(granulocyte stimulating factor)OR(G—CSF),#3:(secondary prevention)
OR(secondary preventive)OR(secondary prophylactic)OR(secondary prophylaxis),
#4:#1 AND #2 AND #3,Limits:Humans,Clinical Trial,English,Japanese]の検索式
4
CQ
前コースで発熱性好中球減少症を生じた場合,次コース
以降で二次予防的にG—CSFを投与することは有効か?
推奨
グレード
B
FN
GCSF
*
化学療法により“治癒”を含む十分な効果が期待でき,治療強度を下げない方がいいと考えられる疾患の患者。例えば,ホ
ジキンリンパ腫,非ホジキンリンパ腫(中,高悪性度),乳がん(術後化学療法),胚細胞腫瘍,絨毛がん,肺小細胞がん,
急性白血病など。