64 腸内細菌構成は種々の要因により異常が生じ胎児期の腸管内に生きた細菌の存在が確認されていて,成熟新生児の胎便中に,通性嫌気性菌のEnterobacteriaceae,Enterococcaceae,Staphylococcaceae,Lactobacillaceaeなどを認め,1週間前後で急速に偏性嫌気性菌のBifido-bacteriaceae,Bacteroidaceaeが出現して優位を占めるようになり定着する1)。そして腸内細菌叢として発育,定着した菌種は,宿主の免疫発達・促進因子としてだけでなく,早産児・新生児の未熟な腸管の解剖学的・機能的発達に重要な役割を果たす。なお,新生児・早期乳児の腸内細菌叢の構成に影響を与える因子に,分娩方法,乳児の栄養法,在胎週数,児の入院の有て持続すると(dysbiosis),肥満,生活習慣病等(国際的には最近,non-communicable dis-eases:NCDsと呼称。本項もNCDsを採用)の発症リスクが成長に伴い高くなる(DO-HaD)。したがって,dysbiosisを有するこれらの児に対する対応策を講じること,すなわちDOHaDの主要な対応策は栄養とプロバイオティクスである。無,抗菌薬投与の有無がある。 b乳児期共同研究者のTsujiら1)によると,母乳栄養児では生後3カ月頃までにBifidobacteriaceae優位の菌叢になり,生後6カ月頃ピークに達して腸内細菌叢の95%以上を占める。その後は離乳食の導入により,E. coli,StreptococcusそしてClostridiumの細胞数が増加しBacte-roidaceaeや嫌気性のグラム陽性菌も増えてきて,母乳栄養児と人工乳栄養児の菌の構成の違いは次第に少なくなる。 c学童前期および学童期共同研究者のWangら2)によると4〜12歳では,Bifidobacteriaceaeは乳幼児期以降から a新生児期山城雄一郎はじめにDOHaDの発現に影響する重要な因子である環境因子のひとつとして,腸内細菌の役割がある。妊婦の腸内細菌は胎児の腸に移行するため,栄養と密接な関係を有する腸内細菌は妊婦の栄養状態とその腸内細菌の両面から胎児へ影響を与える。児は分娩時に多量かつ多様の菌を獲得して腸内細菌叢を確立する。3章C.DOHaDと腸内細菌叢DOHaDのメカニズム3.プロバイオティクスと乳幼児の栄養 1 健常児の腸内細菌
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