C.組織学的分類の説明 9
べきである。
免疫組織化学(表1):胎盤性アルカリフォスファターゼ(PLAP), c-kit(CD117),
podoplanin(D2-40)が細胞膜に陽性を示し,OCT3/4, SALL4, SOX17, NANOGが核に,
Lin28が細胞質にびまん性に陽性を示す
8,9)
。ただし胚細胞性腫瘍においてPLAPは特異性が
低いことなどから有用性はやや低い。Cytokeratinはときに弱陽性を示すが,Glypican-3,
AFP,CD30は通常陰性である
10)
。STGCはhCGならびにcytokeratin陽性となる。
付.精母細胞性腫瘍 Spermatocytic tumor
従来精母細胞性セミノーマとされていたが,現行の精巣WHO分類ではセミノーマとは異な
る腫瘍との観点から,精母細胞性腫瘍と呼称されている
2)
。基本的には成人の腫瘍であるが,
ごく稀に思春期に発生することがある
11)
。リンパ球類似の小型の細胞から,直径約100μmを
示す大型細胞までさまざまな大きさの細胞よりなる精巣腫瘍である。多くは中型の細胞より構
成され,核は円形で,クロマチンは微細顆粒状に凝集する。細胞質は好酸性で,グリコーゲン
は明らかではない。大型核をもつ細胞が特徴的であり,精母細胞に認めるようなフィラメント
状ないし糸状のクロマチンを示す。また陥凹する核をもつことがある。核分裂像が目立ち,し
ばしば異型核分裂像が認められる。間質のリンパ球浸潤や肉芽腫性の炎症は伴わない。Germ
cell neoplasia in situ(GCNIS)の成分は認めず,停留精巣との関係も明らかではない。とき
に高悪性度の肉腫成分を伴うことが知られている。免疫組織学的には,セミノーマで陽性を示
す多くのマーカーは通常陰性である
12)
。
2.胎児性癌 Embryonal carcinoma(図6〜9)
全体が胎児性癌からなる例は稀であり,多くは混合型胚細胞腫瘍の成分として認められる。
肉眼的所見:割面は充実性で,褐色調ないし灰白色調を示し,しばしば出血・壊死巣が認め
られる。
組織学的所見:充実性,管状,乳頭状に配列する細胞より構成され,しばしば出血や壊死・
線維化巣を伴う。腫瘍細胞は未分化で,初期の胚芽内部を構成する細胞に類似し,比較的大型
表1.胚細胞腫瘍における免疫組織化学
CK
AE1/3
PLAP
OCT3/4
c-kit
D2-40
Glypican
-3
AFPhCGCD30SALL4
SOX2
SOX17
NANOGLin28
Dysgerminoma/
Seminoma/
Germinoma
v
+
+
+
+
−
−
−
−
+
−
+
+
+
Spermatocytic
tumor
−
−
−
v
−
−
−
−
−
+
−
−
−
v
Embryonal
carcinoma
+
+
+
−
−
−
v
−
+
+
+
−
+
+
Yolk sac tumor
+
v
−
v
−
+
+
−
−
+
−
v
−
+
Choriocarcinoma
+
+
−
−
−
+
−
+
−
v
−
−
−
+
CK=cytokeratin, v=variable