最近では随分ハードルが下がったと聞きますが、昔は精神科に行っているというだけで変な目で見られたりすることがしばしばあったようです。ただ、現在それが完全にないかといえばそうではなく、いまだにそういう感覚を持っている人は少なくありません。自分のなかの病的な部分というのを認めたくないときなどに、その病的な部分を切り離して、自分以外の人や集団に投影することがしばしばあります。つまり、受診をしている人=病気、受診をしていない自分=病気じゃない、みたいにして、受診しない限り自分は病気じゃない、健康だと思い込むことによって、なんとか今の辛い状況を乗り切ろうと無意識に考えているわけです。いずれ、受診をすることが、あちら側=病気側に行ってしまうという感覚になり、受診をしたら「病気」になってしまう、という信念に変わっていく。初診でいらした患者さんが、この考えの末に受診していると分かったときは、まず「それでも受診してしまった」という傷つきに配慮して診察をしたいところですし、受診をしたら「病気」のような考えが、患者さんの人生の縮図のようになっていないかと想像を巡らせる必要があります。024
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