どう定義されるのかといった基本についての言及はないのである。従来、内因性うつ病に対して、抑うつ神経症とか神経症性うつ病、あるいは抑うつ反応という言葉があった。内因ではなく、神経症的メカニズムで生じているうつ病を示す。性格的に落ち込みやすく常に気分が沈みがちなのを抑うつ神経症、内因性のうつ病に似て一定期間で回復するようなのを神経症性うつ病と使い分けるなどともいわれたが、その辺は曖昧。ただ、DSMで抑うつ神経症に相当するのは持続性抑うつ症と言われるので、慢性的なうつ状態を示すニュアンスがある。それに対して、抑うつ反応は原因となる出来事が解決すれば自ずとよくなる状態だろう。今となってはその■差はどうでもいいが。かくてDSMの大うつ病性障害は内因性うつ病も神経症性うつ病も同じとはいうものの、人間というものは、生物学的次元と心理学的次元が独立に存在しているわけではないので、実際の症例においては両者を明確にわけることができず、それが診療上の困難となる。次のような症例はめずらしくはない。にしてしまったのである。3333
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