第5章 rTMSの手順

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 反復経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation:rTMS)によるうつ病治
療の概略を以下に示す(

表21

)。rTMSは,安全性や忍容性に優れた治療法であるが,注意すべ

き副作用として,けいれん発作などがまれに生じる。診察を通して,rTMSの適応の有無,け
いれんのリスクを評価する。精神医学的な評価としては,rTMSの適応の有無に加えて,うつ
病の発症年齢,うつ病エピソードの回数,現在のうつ病エピソードの期間,うつ病の重症度,
自殺念慮の有無,精神病症状の有無,軽躁/躁病エピソードの有無,治療抵抗性の程度,併存疾
患などを確認しておく。身体医学的な評価としては,器質性精神障害や症状性精神障害を念頭
に診察を進め,必要に応じて,脳波,頭部CTやMRI,血液検査などを行い除外する。精神科
だけではなく,他の診療科からの処方薬も確認し,運動閾値(motor threshold:MT)を修飾す
る薬物の服用,睡眠状況,アルコールやカフェインの摂取状況などを確認する。また,rTMS
の禁忌,磁性体の有無,けいれんのリスクなども評価する。著者らが使用しているrTMS問診
票を

表22

に示す。

 説明と同意は,患者,家族に対して口頭と書面で行い,書面にて同意を得る。また,医学的
記録として残しておく。標準的なrTMS治療にかかる時間,費用,期待される効果と見通し,
予想される副作用,また,副作用への対応など,分かりやすく正確に伝える。rTMS治療の流
れについて,冊子やビデオなど視覚的な情報を提供すると理解しやすい。また,rTMS治療中
は,頭部の動きが制限され,刺激音が生じることも伝える。rTMSを行わない場合,また,
rTMSを途中で中止した場合,rTMSが奏効した場合,rTMSが奏効しなかった場合なども,事
前に十分に説明し,可能な代替療法も含めて説明する。
 rTMSを導入するにあたり,必須の検査はないが,必要に応じて脳波,頭部CTやMRI,血

1

 rTMSによるうつ病治療の手順

表21 rTMSによるうつ病治療

 1.問診票の記入

 2.診察

 3.説明と同意

 4.検査

 5.薬物療法の調整

 6.刺激部位および強度決定

 7.刺激条件および治療計画の決定

 8.治療開始

 9.うつ症状および安全性の評価

10.刺激条件および治療計画の見直し

(鬼頭伸輔:長引く抑うつ症状への専門治療.反復経頭蓋磁気刺激

(rTMS).精神科臨床サービス2016;16:255‒9より)