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δそ薬害1212 CAR-T細胞療法は1回の投与で約3,500万円と医療費が高額となりますが(保険診療であれば、高額療養費制度を利用することで患者さんの窓口負担は一定の金額に収まります)、およそ8割で効果が認められており、期待される治療となっています。白血病などの血液がんの治療以外にも、多数の固形がんに対するCAR-T細胞療法の臨床試験が進められています。 また、およそのしくみはCAR-T細胞と同じですが、特定のがん抗原を攻撃するようにしたT細胞(TCR-T)の開発研究や、自然免疫細胞であるNK細胞、NKT細胞、γT細胞などを利用したがん免疫療法の研究も多数進められています。 前の節でも触れましたが、生体の免疫システムには過剰な免疫反応を抑制するしくみがあり、免疫チェックポイントと呼ばれています (8ページ参照)。がん細胞はこのしくみを利用してT細胞の活性化にブレーキをかけ、T細胞が自分を攻撃しないように防いでいるため、この免疫チェックポイントの働きを阻害するための医薬品が開発されました2)。この薬は「免疫チェックポイント阻」と呼ばれていて、免疫チェックポイントであるPD-1やPD-L1の分子と結合することで、T細胞の活性化にブレーキがかかることを防ぎます。その結果としてT細胞は正常に活性化し、がん細胞を攻撃することができるようになるのです(図3)。 さらに、CTLA-4やLAG-3といった別の免疫チェックポイント分子を阻害することにより、がんを攻撃するT細胞が増加してがんに集まってくることもわかってきました。このときに働くキラーT細胞はネオアンチゲンと呼ばれるがんの遺伝子変異から産生される抗原を主に認識するため、遺伝子変異が多いがんほど、T細胞の働きも強くなり、免疫チェックポイント阻害薬の効果も大きくなります。そのため、がんの種類や遺伝子変異の量によって効果が異なり、すべてのがんに効果があるわけではありません(2章で詳しく説明します)。 このように免疫チェックポイント阻害薬の効果ががんの遺伝子変異の量で推測できることより、遺伝子変異の多いがんを対象として以下のような薬が保険診療で使えるようになりました(表2)。今後、治療を選択する際にMSI検査やTMB検査を行うことが有用となると期待されます。 また、最近では新たにTIM-3、LAG-3、TIGITなどの免疫チェックポイントを阻害する治療法の研究や、免疫チェックポイント阻害薬を使用した併用療法の開発も盛んに行われています。ガンマデルタがいやく2.免疫細胞の攻撃を弱める免疫チェックポイントの働きを止める方法

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