の偽者である、と考えざるをえなかったところに、私の起点は存在しており、そういう自分とは一体何者なのか、ということを考えたいと思った。考えるにあたって、ヒントとなった人が2人いる。1人は、下痢・嘔吐を主訴に内科外来にやってきた20代の女性だった。その女性は、頭痛や発熱が先行する嘔吐・下痢で、カンピロバクター腸炎だったのだけれども、話していていつもと違う感覚をおぼえた。本物っぽいのである。カンピロバクター腸炎の患者に本物も偽者もないのだが、謎の本物感を放っており、しかもそれはこちらが不快になったり、恐怖を感じたりするようなものではなく、とても親近感をおぼえるようなものだった。なぜか、目が合っただけでこちらの言っていることが完璧に伝わるような雰囲気、そして同時に向こうがなにを言おうとしているのかも分かるような雰囲気を感じた。これって恋?そう思った。それが今の妻である。という展開にはなることはなく(そもそも患者だし)、二度とその患者と出会うことはなかったわけだが、そういう謎の体験がまずあった。そして2人目は、コロナが流行するだいぶ前に新宿御苑あたりで飲食をした20代 2525
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