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「ふつうにみえるけど、自分を偽者と思っている人」の世界についての重要な情報しかし、特に理系の学術論文などを書く際は、ある信頼性の担保のためにどうしてもこのような手続きというのが必要になるのであって、これは仕方がない。本書はそのような過程を省き、ただ私が主観的に感じたことを可能な限り研ぎ澄ませて得た結果を記述しただけであって、そういう意味での学術的価値はない。しかし、そんななかにも、ある種の真実の煌めきのようなものはあると思っていて、その光景を見せたいという欲求が、私のなかにはある。もうひとつは、当然いまの話と呼応してくるのだが、「偽者の当事者研究」という意味合いである。当事者研究というのは、統合失調症や発達障害など、ある特定の病名を持つ患者自らが、その体験から自分と自分の病気についての考察を立ち上げていくというスタイルで行われる研究手法である。当事者としては自らの理解というモチベーションの方向性がまずあり、学術的にはその疾患の当事者側から見た世界についての重要な情報になるわけだが、それを本研究に当てはめてみれば、当事者として自らを理解するというモチベーションがまずあり、それは公的には、になるはずである。3333

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