の女性だった。LINEをしている時点では分からなかったのだが、お店ではじめてお会いした瞬間に私はまた謎の本物感をおぼえた。この人は本物だ、そういうオーラを放っていた。曰く言い難いこのオーラ、なんといえばいいのだろう。私たちはアヒージョ的なものを食べ、彼女の語る話を聴いた。本物のアヒージョに、本物のバゲットをつけて食べながら聞いた彼女の話は大きく頷きたくなるような本物の話だった。本物の海老の殻が剥きづらくて手がベタベタになった。それすら本物らしいと思った。彼女からも同様に目が合っただけでこちらの言っていることが完璧に伝わるような雰囲気、そして同時に向こうがなにを言おうとしているのかも分かるような雰囲気を感じた。当然のことながらこれって恋?そう思った。それが今の妻である。という展開にはならなかった。本物の恋ではなかったからである。ではまた誘います!などと言って別れた25秒後くらいから急速にどうでもよくなり、まあこれ以上会わなくてもいいかなとなんとなく思ったし、向こうもたぶんそう思っているような気がした。音信不通になった。恋の予感は的中率が著しく低かった。2626
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