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  7782歳,女性患者背景 地方都市在住。一人暮らし。キーパーソンは大阪在住の長男だが帰宅(同居)困難。通院は近所の友人がサポート(頻回通院は困難)。日常生活 買い物,食事の準備・片づけ,洗濯,入浴,排泄のADL(日常生活動作)は自立。IADL(手段的日常生活動作;Lawton scale)は移送の形式のみ問題あり。IADLの詳細:登録された3カ所への電話は可能,旅行は機会がないので行かない,車の免許なし,移動は手押し車(膝が悪いため)かタクシー利用。地域の公共交通機関はバスしかなくほとんど利用しない。嗜好歴 飲酒なし,喫煙:64歳まで。併存疾患 慢性閉塞性肺疾患(COPD),自己免疫性肝炎,膝関節症内服薬 チオトロピウム吸入,ウルソデオキシコール酸,ロキソプロフェン,レバミピド,ランソプラゾール,酸化マグネシウム現病歴 1カ月前から咳嗽があった。健康診断の胸部単純X線で異常を指摘され,近くの総合病院から肺がん疑いで当院へ紹介された。身長・体重 152 cm,47.6 kg検査所見 胸部単純X線:左肺門部に腫瘤影を認める。胸部CT:左上葉に52 mm大の腫瘤,その末梢に無気肺を認める。左肺門部・上縦隔リンパ節の腫大あり。PET/CT:左上葉の腫瘤と左肺門部・上縦隔のリンパ節に異常集積を認めるが,他に遠隔転移を疑う集積なし。頭部造影MRI:脳転移を疑う所見なし。気管支鏡検査:細胞診,組織診とも小細胞肺がんの診断。PS(パフォーマンスステータス) 1(咳嗽)追加情報(告知後)本人「治療しないと悪くなるでしょ? ぜひ治療してください」長男「本人の希望通りに。でも通院サポートはできません」・ 最近の体重減少なし,むしろ半年間で2 kgの増加。・ 肝腎機能問題なし,貧血,難聴なし。看護師からの情報・告知は前向きに受け止め,治療意欲は高い。・化学療法の副作用に関する理解度が低い印象。・ 膝が悪く,家の居間で立ち上がるときに複数回転倒歴あり。・ 自宅は木造築80年以上の家屋で平屋だが,段差が多い。・ 内服薬,吸入薬は自己管理。本人曰く「問題なくできている」。本症例で実際に行った介入・ 高齢者用量のカルボプラチン/エトポシドを選択すると仮定した場合,CARG(Cancer and Aging Research Group)スコアは8点,Grade 3以上の毒性リスク59%と,臨床試験結果と比較して毒性リスクがとりわけ高いわけではないことを確認。・ 介護保険の申請,ケアマネージャーの選定(要介護1となった)。・ 自宅療養中は週に2回ホームヘルパーの訪問,生活状況の確認。・ 自宅の環境整備(段差をなくす,手すりをつける)。・ Mini—Cogで3単語再生は可能だったものの時計描画ができず軽度の認知症を疑い,改訂長谷川式簡易知能評価スケールを実施したところ20点。脳神経内科へコンサルトも医学的な治療は必要ない範疇との判断(入院など環境が変わるときには要注意とのコメント)。・ 通院にかかわる友人の負担をできる限り軽減するため化学療法は入院で実施。・ 使用薬剤の整理も試みたが最終的にはすべて継続。実際の経過 高齢者用量のカルボプラチン/エトポシドを選択,途中Grade 2レベルの貧血,血小板減少を認めたが,4コース完遂した。その後,sequentialに根治的放射線治療を実施し完遂した。(津端由佳里)症例提示(小細胞肺がん,cT3N2M0,Stage ⅢB,LD‒Stage)症例2:vulnerable/pre‒frail

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