第1章5.社会・経済的背景 63 高齢化社会の定義は,1956年の国連での報告書において,65歳以上が全人口の7%を超えると「高齢化した(aged)」人口とよんだことに由来するとされている。7%以上を高齢化社会(日本では1970年),14%を超えると高齢社会(日本では1994年)とし,21%を超えると超高齢社会とされている。 わが国は,2010年には超高齢社会を迎えた(図1)。2021年10月1日の時点で高齢化率28.9%,人口1億2,550万人で65歳以上3,621万人(65~74歳:1,754万人,75歳以上:1,867万人)は,カナダの総人口3,770万人(2020年)に匹敵する。15~64歳が2.1人で65歳以上の1人を支える計算となり,医療・福祉のあり方,社会保障制度,経済の構造など,日本社会の根本からの変革が必須となっている。 日本政府は,2018年に「新たな高齢社会対策大綱」を閣議決定し,現在これに基づいた政策「ニッポン一億総活躍プラン」がとられている1)。目指す社会は“Society 5.0”で,「サイバー空間の積極的な利活用を中心とした取組を通して,新しい価値やサービスが次々と創出され,人々に豊かさをもたらす,狩猟社会,農耕社会,工業社会,情報社会に続く5番目の社会」の実現である2)。 高齢がん患者に特化した社会・経済的背景についての統計はないが,がん患者の社会・経済的背景とがん患者以外のそれとは差はないと考えられるので,本項は内閣府「令和3年版高齢社会白書」日本における高齢者の社会的・経済的背景の実態3)を参照した。 経済的な意味で日々の暮らしに困ることがないと感じる60歳以上の高齢者は63.6%で,年齢階級別にみると,70~74歳(59%)を除き,「困っていない」と回答した割合が60%を超えており,特に80歳以上では67.4%であった。 高齢者世帯(65歳以上の高齢者のみで構成するか,またはこれに18歳未満の未婚の者が加わった世帯)の平均所得金額(2018年の1年間の所得)は312.6万円で,全世帯から高齢者世帯と母子世帯を除いたその他の世帯(664.5万円)の約5割となっている。 高齢者世帯の所得階層別分布をみると,150~200万円未満がもっとも多くなっている。さらに,公的年金・恩給を受給している高齢者世帯について,公的年金・恩給の総所得に占める割合別世帯数の構成割合をみると,公的年金・恩給が家計収入のすべてとなっている世帯が半数となっている(図2)。 一方,高齢者の資産は,2人以上の世帯についてみると,世帯主の年齢階級別の家計の貯蓄・負債の全般的状況は,世帯主の年齢階級が高くなるにつれて,1世帯あたりの純貯蓄は概ね増加し,世帯主が60~69歳の世帯および70歳以上の世帯では,他の年齢階級に比べて大きな純貯蓄を有していることがわかる。年齢階級が高くなるほど,貯蓄額と持家率が概ね増加する一方,世帯主が30~39歳の世帯をピークに負債額は減少していく。また,貯蓄現在高について,世帯主の年齢が60歳以上の世帯と全世帯(いずれも2人以上の世帯)の中央値を比較すると,前者は1,506万円と,後者の1,033万円の約1.5倍となっている。貯蓄現1.日本における高齢者の社会・経済的背景の実態A高齢者の経済的問題1高齢者の所得・資産3)社会・経済的背景5
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