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272  第3章 がんを抱えながら生きる高齢者への対応となる。Fこれから生じる症状を説明し不安を 死が近づいてくると,本人のみならず家族も,どのような症状がでて,どのような経過をたどっていくのか不安になるため,これから生じる体の変化について詳しく説明する必要がある。われわれは,解りやすいように「生き方・逝き方の図」という図(図3)を用いて,食べられない,呼吸がしにくい,血圧が下がる,意識がなくなるなどの症状は,病的なものではなく,人生の最終段階では極めて普通の生理的な変化であることを説明して,家族の皆が静かにそばで寄り添って見守ってあげることが大切な時間であることを説明している。表4に「生き方・逝き方の図」を用いて説明する際の要点を記載する。病状の進行がわからなければ寡黙なまま過ごすことになりかねない。どのような状況でもこの図により,残された時間の過ごし方が少しでも具体化されると,後悔しないように,多くの話をし,本人もしくは家族のためのNBMの時間として有意義に過ごしてもらえる。(文献12より作成)◆◆◆▶ 歩けない▶ 食べられない▶ 呼吸機能低下▶ 血圧低下▶ 意識低下▶ 永眠図3 生き方・逝き方の図(どのステージでも起こり得る)急変救急車在宅医mmHg15010050…病院自宅: 経管栄養 高カロリー輸液 酸素吸入 自然死 アドバンス・ケア・プランニング(advance care planning;ACP)は,人生会議と呼称され,国内で広く浸透するように各方面で努力されている。ACPについて,何か特別な会議を開催して,出席者一同が,そこで提案された事柄をすべて共有するという風に捉えると敷居が高く,取り組みがたいかもしれない。しかしながら,外来の診療や入院中の病棟において,その場で,家族,看護師,医師など,誰かが患者の物語を聞くなかで,今後の方針についての話をし,その内容を共有することができたら,その行為自体をACPと考える。すなわち,NBMを実践している日常の診療のなかにACPが行われているし,そのようなACPの在り方のほうが自然であると考える。 医療は,検査・診断・治療という一連の流れのなかで行われる行為であり,医療行為の現場では医師と患者とのつながりが治療効果にも反映するは緩和5.アドバンス・ケア・プランニングとNBM

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