2メンタルヘルスの専門家に紹介 遺族がうつ病や複雑性悲嘆を呈すると,生活の質(QOL)の低下だけでなく,希死念慮や自殺企図とも関連し,メンタルヘルスの専門家の介入が必要になる場合がある。ここでいうメンタルヘルスの専門家とは,遺族ケアにある程度精通した,精神科医や心療内科医,公認心理師・臨床心理士,精神看護専門看護師やがん看護専門看護師などを指す。また,遺族においてはアルコールの使用や睡眠障害が増加し1),これらがうつ病や複雑性悲嘆のリスクとなることも指摘されている2,3)。医療者が家族や介護者に対して,死別前から関係を作り,リスク評価を行うことで,死別後の適応を意識した家族ケアの提供,生前の信頼関係をベースとした死別後の支援の継続,自ら支援を求められない遺族への医療者側からの介入,などにつながる可能性がある。強い悲嘆反応を呈する遺族の特徴について,①遺族の個人的背景,②治療に関連した要因,③死に関連した要因,に大別し以下の表4にまとめた。 遺族の個人的背景について,うつ病など死別前の精神疾患の既往4)やアルコール・物質使用障害3),故人との愛着の問題5)のほか,経済的困窮や社会的孤立6)が挙げられる。ケアのために仕事を辞めることは死別後の反応に悪影響をもたらすため7),医療者が介護者の経済的問題をアセスメントし,就労を続けられるようサポートすることが求められる。 治療に関連した要因として,家族の強い負担8)や,医療者に対する不満や怒り9)があ表4 強い死別反応に関連する遺族のリスク因子①遺族の個人的背景・うつ病など精神疾患の既往,虐待やネグレクト4)②治療に関連した要因・治療に対する負担感や葛藤8)③死に関連した要因・病院での死6,7)・アルコール・物質使用障害3)・死別後の睡眠障害1,2)・近親者(特に配偶者や子供の死)・生前の患者に対する強い依存,不安定な愛着関係や葛藤5)・低い教育歴,経済的困窮6)・ソーシャルサポートの乏しさや社会的孤立6)・副介護者の不在など,介護者のサポート不足12)・治療やケアに関する医療者への不満や怒り9)・治療や関わりに関する後悔10)・積極的治療介入(集中治療,心肺蘇生術,気管内挿管)8)の実施の有無・ホスピス在院日数が短い6,7)・予測よりも早い死12),突然の死・死への準備や受容が不十分6)・「望ましい死」であったかどうか8.9.11,12)・緩和ケアや終末期の患者のQOLに対する遺族の評価12)すべきハイリスク群の特徴
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