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【採用文献の概要:臨床疑問2a】 本臨床疑問に関する臨床研究としては,無作為化比較試験が2件1,2),比較群のない前後比較試験が3件3‒5)あった。採用文献1,2,5はDSM-Ⅳ,採用文献3はDSM-Ⅳ-TR,採用文献4はハミルトンうつ病評価尺度スコア15点以上にてうつ病と評価している。なお,DSM-Ⅳ,DSM-Ⅳ-TRのうつ病の評価基準については現行のDSM-5と同様である。採用文献の概要を表7(P90)に示す。 Reynolds 3rdら1)は,重要他者の喪失の6カ月前または12カ月後に大うつ病エピソードが始まった50歳以上の成人遺族80名を対象として,効果判定にハミルトンうつ病評価尺度を用いて,三環系抗うつ薬ノルトリプチリン(平均投与量33.9 mg/日)の効果を16週間の無作為化比較試験で検証した。ノリトリプチリン群25名,ノルトリプチリン+対人関係療法群16名,プラセボ群22名,プラセボ+対人関係療法群17名の4グループの比較試験であった。ノルトリプチリン群は,プラセボ群と比べて,ハミルトンうつ病評価尺度の50%以上減少率が有意に高かった(56.0% vs. 45.5%)。また,ノルトリプチリン群は脱落率が28.0%で,プラセボ群の18.2%と比べて高値だった。 Shearら2)は,複雑性悲嘆質問票30点以上の18歳以上の成人遺族395名を対象とし,抗うつ薬の選択的セロトニン再取り込み阻害薬シタロプラム(本邦未承認)の効果を無作為化比較試験で検証した。シタロプラム群101名,シタロプラム+複雑性悲嘆治療(修正対人関係心理療法にPTSDに対する認知・行動療法に基づく技術を加えた治療法)群99名,プラセボ群99名,プラセボ+複雑性悲嘆治療群96名の4グループの比較試験であった。主な尺度として簡易抑うつ症状尺度を用いた。シタロプラム群とプラセボ群を比較した場合,介入12,20週間後の抑うつ症状の程度に有意差は認められなかった。シタロプラム+複雑性悲嘆治療群99名は,プラセボ+複雑性悲嘆治86 臨床疑問2aがん等の身体疾患によって重要他者を失った(病因死)18歳以上の成人遺族が経験するうつ病に対して,向精神薬を投与することは推奨されるか?▶▶推奨文がん等の身体疾患によって重要他者を失った(病因死)18歳以上の成人遺族が経験するうつ病による抑うつ症状の軽減を目的として,抗うつ薬を投与することを提案する。■推奨の強さ:2(弱い)■エビデンスの確実性:C(弱い)臨床疑問2がん等の身体疾患によって重要他者を失った(病因死)18歳以上の成人遺族が経験する精神心理的苦痛に対して,向精神薬を投与することは推奨されるか?

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