表3 不安の諸症状・感情:不安,恐怖,焦り,イライラ,など・認知:心配,マイナス思考,考えの堂々めぐり,集中困難,など・行動:落ち着かなさ,怒りっぽさ,不安の対象からの回避,頻回の確認,飲酒や喫煙の増加,など・身体(交感神経亢進症状):不眠,動悸,息苦しさ,胃腸不調,頭痛・腰痛,などⅡ章 〓文 献 1) 日本精神神経学会 日本語版用語監修,髙橋三郎,大野裕 監訳.DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル.医学書院,東京,2014 論が,一般的に想定されるより程度が強かったり,期間が長かったりする場合は,適応障害(後述)と診断される。 不安とは,「危険が迫っている」という認識に関連する心理・身体的な反応で,漠然とした恐れの感情が続く状態である。表3に示すような,感情,認知,行動,身体面の特徴を示す。医療の場では,身体症状や行動上の問題の形で顕在化することがある。例えば,(不安に伴う)動悸や呼吸苦で救急外来を受診する,必要な医療行為を避ける(例:検査を受けに来ない),怒りっぽく医療者と衝突する,考えがまとまらず治療上の意思決定ができない,などである。 医学的に説明がつかない身体愁訴,客観的所見に比して過度にみえる身体症状,繰り返される医療上のトラブル,なども,背景に未解決の不安症状がある可能性がある。 恐れの対象がより特定(限定)されている場合は,「恐怖」という用語を用いる。閉所恐怖,嘔吐恐怖などがその例である。医療の場では,MRIなどの閉鎖的空間を恐れる,嘔吐を恐れて食事を過度に避ける,などの形で表れる。「がん再発恐怖」については,本ガイドラインの別項を参照のこと。 強い不安や恐怖を経験すると,そのような状況に近づくだけで強い不安や恐怖を感じ(予期不安),そのような場所や状況を避けるようになりやすい(回避行動)。 不安や恐怖は,危険と認識した事象に対する人間の自然な反応であるが,その反応が通常想定されるよりも強かったり長引いたりし,強い苦痛や機能障害をきたした場合に,不安障害(不安障害)や適応障害と診断される。特定のパターンの症状を有し一定の診断基準を満たす場合には不安障害,不安障害の診断基準は満たさないものの,不安症状やそれに伴う機能障害が当該の状況から通常予測される反応の程度を明らかに超えている場合は適応障害(不安を伴うもの)の診断となる(詳細は「適応障害」の項を参照)。不安障害とその類縁疾患の概要1)を表4に示す。3.不安 17(藤澤大介) 2) Akechi T, Ietsugu T, Sukigara M, et al. Symptom indicator of severity of depression in cancer patients:a comparison of the DSM-IV criteria with alternative diagnostic criteria. Gen Hosp Psychiatry 2009;31:225‒32総3不安
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