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第2章 症例Z 営衛調和で巡らせる 上方・表層(肺)における津液の巡りの悪さ糞便を順に送り出す腸管や胃気の下向きの動きの滞りな生理機能を知り、それと照らし合わせてなぜ症候が生じるかを探るのです。東洋医学で考える健康状態とは、気血津液が順調に巡っていることを基礎においていて、生体機能には量的充足以上に、巡りの健常さが重要と考えています。治療においても、巡りを確保することを大きな柱とします。生きているということは巡っている、巡っているから生きているということなのです。水や血の陰の軸から気や熱の陽の軸に意識を広げて症例を見ましたが、この見方では、陰虚か湿蘊か、陽虚か陽亢か、それぞれの軸上の過不足を意識しがちです。この量の見方に対して、動きや巡りの見方をすることを東洋医学ではより大切にしています。症候の意義を解釈するときに、一般的には量的な視点が主体になりますが、同じ症候に巡りを意識した視点を持ち込んで解釈すると少し意義が変わり、場所や方向性の要素が分析の中に持ち込まれます(表2-1)。表2-1 分析の視点の違いによる症候の意義の変化る上でとても大切なことです。各症候に弁証(東洋医学的診断)的意義をつけて、治療に結びつける方法があります。症例Zでは、鼻閉で眠れない→湿盛と心血虚、便通が悪い→燥熱、多汗で熱感→湿熱、ふらつく→陰虚などと解釈し、それらを単純に貼り合わせたモザイク診断で、必要な治療手段を考える方法です。一見よさそうに思いますが、ここで下した弁証意義は、ある1つの見方にしか過ぎないので、それを無造作に足し合わせても、実像を描けるとは限らないのです。身体の置かれた状態がそれぞれの症候を作っているのですから、各症候を判断材料として、身体を立体的な有機体として把握することを目指します。そのためには、なぜそうなるのかを常に意識することです。症候と関連する健常巡りを意識した視点症候一般的捉え方鼻閉鼻に水が充満排便異常便が硬くて出ない(水の不足) 25 東洋医学の基本 弁証の基本 同じ症候が、分析の視点を変えることでその意味が異なることは、病態を把握すZ「過不足よりも 巡り」に注目

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