を見ます。陰の過剰の症候、陰の不足の症候、真っ向から対立する所見が同等数見られました。どちらが正しいのでしょう。もし同等数でなかったとしても、多数決で決めるべきことではないので、ある見方から見て正反対のものが見えたのですから、それを無視して色眼鏡の道を進むわけにはいきません。その矛盾の解決をしなければなりません。その際、どちらが正しいのかを考えるだけでなく、どちらの所見も現象としては事実なのですから、そこに矛盾が生じるのは、色眼鏡の見方そのものに問題があるのではないかと考えることも大切です。違った色眼鏡に掛け替えるという安直な意味ではなく、色眼鏡をかけることで見落としている「見方」があるのではないかという考えで矛盾を解決する姿勢です。それが次のステップとなります。色眼鏡の軸とは異なる軸を意識する図2-1に示したように、陰陽の概念とは、「陰は何、陽は何」と対象を固定して定義づけるものではなく、対象の特徴や実態を把握する時に、重複しない違った見方があることを意味しています。ここまで見てきた「色眼鏡」は「陰の過不足」の軸でした。その軸上で、正反対の意味を持つ症候が見られました。そこで、その軸とは異なる軸の存在と、その軸からの見方で何が見えるかを把握する姿勢が必要になります。①陰の「動き」いきなり陰の軸の色眼鏡を掛け替える前に、陰の軸上で見落としているものはないかを考えることが大切です。「過不足」は量の軸ですから、陰軸上の「陰」の視点。それと異なる陰軸上の「陽」の軸は「動き」の視点。陰の「動き」に関係すると感じられる所見を拾い上げます。「排尿の異常を感じることが多い 肩がこりやすい 子宮筋腫・卵巣嚢腫 自覚的むくみ・鼻閉(←単なる過剰ではなく滞りの結果と解釈できる)」などがあり、この症候からは、水や血液の動きの悪さが感じられます。②「陽(熱)」の様子陰の軸上の量と動きの2つの視点を見ましたが、陰の軸を離れた陽の軸から症例水の過不足や動きと異なる軸として、熱の様子に関係すると感じられる症候を集めます。「顔のほてり(上方を主とする熱感)、疲労時や夜間に手のひらや足の裏が熱い(陰が不足して生じる虚熱)、甲状腺機能亢進の既往(陽を強める病態)」など局在する感じはありますが、熱が多い症候が見られます。③矛盾を解決する24
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