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第2章 症例Z 営衛調和で巡らせる 本症例では「152cm 57kg BMI:24.7」から「陰の過剰」や「湿盛」の存在を念頭に置きます。こうした結果を生む原因も考えることが必要ですが、それはこれから先の分析の過程で明らかにしていきます。「顔色白」から、陽虚または血虚の存在を考慮します。症例Zで具体的に進めてみましょう。最初に意識した軸で症候を分析診察の中で一番気になったことや、状態を把握しやすく感じたことなど、第一印象に残るものをまず意識して、当面それと同じ見方で身体の状態を分析します。この症例では、望診で見た「陰の過剰」。主訴症状に対しても同様の視点を向け、「排便時の不快」「夜間の鼻閉感」が陰陽の視点からどう捉えられるかを考えます。陰陽の視点から捉えやすいのは「鼻閉感」で、水が充満している状態と捉えることができます。望診の肥満傾向と合わせて「湿盛」の状態と捉えることができます。こうした最初に意識にのぼった第一印象を「色眼鏡」として、この色眼鏡に沿った分析を進めます。①まず「色眼鏡」に沿った情報を収集第一印象で手にした色眼鏡に合致する「陰が多いと感じられる症候」を、所見や症候の中から拾い上げます。「動くと汗が多く出やすい 太っているほう 皮膚表面しっとりしている BMI:24.7 鼻閉 むくみ」など、主訴以外にも湿盛に符合する症候が見られます。このことで色眼鏡の正当性を裏付けます。②次に「色眼鏡」と矛盾する症候の有無を確認色眼鏡で都合のいいことだけを見ていないかを確かめる作業として、色眼鏡とは逆の「陰の不足」と感じられる症候を意図的に拾い上げます。「便秘になりやすい ふらつきやめまいが多い 疲労時や夜間に手のひらや足の裏が熱い 大便が硬いことが多い 髪の毛細い Hb11.8 睡眠5時間(腎陰虚になりやすい条件)」など、結構な数の症候が「陰の不足」を窺わせるものとして見られました。色眼鏡で見た「陰が過剰」という単純な病態ではなさそうです。色 赤 → 陽の過剰(陰の不足から生じる虚陽も)色 赤 → 陽の過剰(陰の不足から生じる虚陽も)  白 → 陽の不足・血の不足(陰の過剰や寒邪の強さからも)  白 → 陽の不足・血の不足(陰の過剰や寒邪の強さからも) 23Z分析の基本姿勢 東洋医学の視点から、対象を分析するときの基本姿勢として提唱したいのは、常に2つの軸を意識することです。分析を開始した視点とは異なる軸の存在を常に意識して分析を進めることです。

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