陰陽実(多)虚(少)とはいえ、主訴症状から即、薬を選択する診療姿勢で、頭の中にあるのは、漢方薬ばかり。「とりあえず薬が決まればいいでしょ?それで治ればいいでしょ?」の姿勢は「オンリーZ」の姿勢です。せっかく「フェアレディーZ」に乗るのに、「目的地に着けばいいでしょ」では、車好きには許せません。同じように、漢方好きには、薬がなぜ効くのか、なぜこの人にこの薬なのか、なぜこの人がこんな状態になったのか、いろいろな「なぜ」を意識せずにはいられません。症状を薬決定の道具にするのではなく、症状を見たら薬はまず背中に背負っておいて、症状の奥にある患者さんの姿をじっくり見つめることが、ZからAに向かって進む第一歩となるのです。主訴の周辺のことが把握できたら、今度は患者さん全体の状態を把握することで、患者さんがどんな状態に置かれているのか病態像を描き、どういう手助けを必要としているのかを考えることで治療手段が見えてきます。それからおもむろに、薬の方を向いて、道具箱から必要な道具を集めるように、必要としている治療手段に見合う道具として漢方薬を選択する姿勢をこれから手に入れたいと思います。症例Zでは、まず、患者さんの病態把握の原則についてお話しします。その中でも、診察でまず一番先に手に入る情報が「望診」の情報です。望診による形や色から「陰陽」の状態を把握します。形からは陰の様子を、色からは陽の様子を探ります。以下のような一般的な原則を理解しておきます。形 痩せ・細い・薄い → 陰の不足形 痩せ・細い・薄い → 陰の不足 肥満・太い・厚い → 陰の過剰 肥満・太い・厚い → 陰の過剰量・形・潤大きさ動き・力・熱・色陽実耗陰湿熱陰虚陽亢湿蘊湿盛陰陽両虚陽虚湿盛実(多)虚(少)図2-2 四診の指針陽的な視点と陰的な視点の2要素で把握22 さて、何を見る? 病態把握のための基本姿勢 望診の基本:形と色から陰陽の把握東洋医学の診断手段「四診」の「指針」は、陰陽の状態を把握することです。陰陽それぞれの過不足の状態を知ることで身体の状態の概略を把握します(図2-2)。
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