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以上の作用機序から■根湯の方意として以下の位置づけができます。■根湯は感冒に限らず、正気の外向きの力が今ひとつ不充分で、衛気に限らず、陽気、津液などを表層に到達させられない病態、皮膚疾患、関節疾患、鼻炎、喘息、気管支炎、津液や血の瘀滞など幅広く適応が考えられます。落語に登場する「■根湯医者」は、あながち藪医者でもないのです!例えば筆者は、アトピー性皮膚炎の治療に際して、表層へ津液を導く手段として■根湯の方意を一部に組み込むことを頻用します。「蓄膿症、■桃腺炎、結膜炎、乳腺炎、湿疹、蕁麻疹、肩こり、神経痛、偏頭痛」など感冒以外の病態への適応は、「表層と深部をつなぐ巡りの改善を図る作用」が、局所で鬱滞する炎症や、皮膚や末梢で滞る湿疹や■痛への解消につながっていると考えることができます。使用上注意を要する病態として、陰虚や気滞に注意しておきましょう。■根湯は気を表層に引き出して解決するのですから、気滞のように流れが滞っている場合や、気の流れの基礎となる津液が不足している陰虚などの場合、動悸や嘔気など麻黄や桂皮の作用が陽気を盛んにさせ過ぎる状態を引き起こす可能性があります。発散が主体なので、単独で惰性的に長く使う方剤ではありません。目的に応じて、滋陰養血、あるいは利湿活血など他の方剤で補完的な手段を兼施することが必要です。また、■根湯の作用を充実させるためには、脾気や腎陽を補うことが必要な場合もあるので、素体の状態を充分分析して併用を考慮することが必要です。   表位における病象に対して、正気を誘導する   正気の誘導を手段として、津液や血を表位に運ぶ   表位に停留する津液や血を裏に回収する50

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