腎肝脾体表津液第2章 症例Z 営衛調和で巡らせる たり、②脾気や腎気が弱いために肝気の外向きの流れを充実させられない脾虚や腎陽虚であったり、③表層の湿が外向きの気の流れを邪魔する湿蘊であったりします(図2-38)。発散作用を助けるための生薬構成を持ち、その中で発散のための麻黄が重要な役目を担っていますので、麻黄剤と位置づけても違和感はないわけです。しかし麻黄や発散の作用が主体で効いているとするのでは、外感病以外の種々の症候にも■根湯が奏効する事実を説明しきれないと思います。■根湯の別の姿 ■根湯は、桂枝湯に、麻黄、■根を加えた構成(表層の営衛に関わる桂皮・芍薬の分量は桂枝湯の約半量となっています。麻黄、■根の発表剤が主体となるためと考えられます)になっています。その意味では、■根湯の別名(本質を示した名称)として、 桂枝加麻黄■根湯とも表現できる内容です(図2-39)。■根湯は、単なる発散だけでなく、桂枝湯の深部表層にまたがる営衛の調和によって、身体の深部⇔表層の巡りの仕組みを整え、深部と表層のつながりを充実させる働きの上に、麻黄の正気発越で巡りの力強さを提供し、■根の発散で局在する鬱滞を解消しています。また、■根には、脾胃の陽気を表層に引き出す作用もあるとされ、これが深部⇔表層の巡りに貢献します。この組み合わせが、発散薬としての表層での効果だけでなく、身体中の巡りを改善させて種々の効能を生むと解釈することが必要です。身体の陰液の巡りを強制的に強める手段とともに、身体深部と表層をつなぐ気血津液の巡りを確保する桂枝湯が骨格にあるからこそ、麻黄の力強さが活かされるのだと思います。桂枝湯麻黄・■根図2-38 ■根湯が適応する病態脾腎の虚を背景とする肝肺の虚・表層の湿蘊衛気は表層に集まるが邪気を追い払えない図2-39 ■根湯(その実桂枝加麻黄■根湯)水精微殻CA心肺心EBDGF心肺Z脾衛気肝(熱)腎陰腎陽外邪 49
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