「家族性非ポリポーシス大腸癌におけるマイクロサテライト不安定性検査の実施についての

見解と要望(2007年7月5日)」日本遺伝性腫瘍学会(旧 日本家族性腫瘍学会)

(http://jsht.umin.jp/project/data/index.html)
「遺伝性腫瘍e—Learning」ePrecision Medicine Japan
(https://www.e-precisionmedicine.com/familial-tumors)

 注 釈 

 dMMR判定検査でdMMRと判断された患者に対するBRAF遺伝子検査の有用性

 散発性大腸がんでdMMRを示す主な原因は,MLH1遺伝子のプロモーター領域の後天的
な異常メチル化であり,このようながんでは免疫染色でMLH1/PMS2タンパク質の発現消失
を認める。また,MSI—Hを示す大腸がんの35—43%にBRAF V600Eを認めるが

18)

,リンチ

症候群の大腸がんではMSI—Hを示しても,BRAF V600Eはほとんど認めない

12)

。したがっ

て,大腸がん診療ではdMMR判定検査でMSI—HまたはMLH1/PMS2発現消失を示した場
合,BRAF V600Eの有無を確認することで,リンチ症候群か散発性大腸がんであるのか鑑別
の一助となる

61)

。ただし,PMS2遺伝子が原因のリンチ症候群においては,発症した大腸が

んの一部にBRAF V600Eを認めることが報告されており注意が必要である。また,大腸が
ん以外の固形がんではBRAF V600Eによる鑑別の有用性は報告されていない。

 注 釈 

 Constitutional Mismatch Repair Deficiency:CMMRD

 MMR遺伝子の両アレルに先天的に病的バリアントを認める(homozygousまたはcom-
pound heterozygous)先天性ミスマッチ修復遺伝子異常症(constitutional mismatch repair 
deficiency:CMMRD)は,小児がん素因(childhood cancer predisposition)となる。小児・
思春期に,主として造血器・中枢神経・大腸の悪性腫瘍が発生する。神経線維腫症1型

(NF1)と類似した皮膚所見を呈することが多く鑑別を要する

62)

。1959年にTurcotらが,家

族性大腸ポリポーシスに脳腫瘍を合併した兄弟を報告したことから,大腸腫瘍と脳腫瘍を合
併する症例をTurcot症候群と呼び,CMMRDの中にはTurcot症候群と診断されているケー
スもあると推測される。1999年に,初めて分子遺伝学的にCMMRDが証明され,さらにそ
れらの患者の腫瘍の中にMSI—Hを示すhypermutantが多く認められ,圧倒的に多くのneo-
antigenが発現していることが判明した。そして抗PD—1/PD—L1抗体薬が有効なことが近年
報告されている

63,64)

クリニカルクエスチョン(CQ)

 

CQ1

 dMMR

判定検査が推奨される患者

 PubMedで“MSI or microsatellite instability or MMR or mismatch repair”,

“neoplasm”,

“tested or diagnos* or detect*”のキーワードで検索した。Cochrane Libraryも同等のキー

ワードで検索した。検索期間は1980年1月~2019年8月とし,PubMedから815編,Cochrane 
Libraryから43編が抽出され,それ以外にハンドサーチで1編が追加された。一次スクリー

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