で検索した。検索期間は1980年1月~2019年8月とし,PubMedから70編,Cochrane 
Libraryから1編が抽出され,それ以外にハンドサーチで4編が追加された。一次スクリー
ニングで68編の論文が抽出され,二次スクリーニングでも68編が抽出され,これらを対象
に定性的システマチックレビューを行った。

 TRK阻害薬であるエヌトレクチニブ,larotrectinibは,切除不能あるいは転移性の固形が
んに対して,治療ラインを問わずに試験が行われ,高い有効性が示されている。NTRK融合
遺伝子の頻度は低いもののがん種を問わずに認められており,また臨床背景でNTRK融合
遺伝子の有無を判断できるような確実なバイオマーカーは確立されていないことから,TRK
阻害薬の適応を判断するためには,NTRK融合遺伝子が報告されているすべての転移・再
発固形がんにおいて検査を行うことを強く推奨する

140)

。また,唾液腺分泌がん(乳腺類似分

泌がん),乳腺分泌がん,乳児型線維肉腫(先天性線維肉腫),先天性間葉芽腎腫などでは,
NTRK融合遺伝子(特にETV6—NTRK3融合遺伝子)を高頻度に認めることから(「6.3 
NTRK融合遺伝子のがん種別頻度」参照),これらの疾患においてもNTRK融合遺伝子の
検査を行うことを強く推奨する。なおNTRK融合遺伝子は他のドライバー変異とは相互排
他的であることから

81,84,112)

,相互排他的なmitogenic pathway(成長因子受容体,RAS,

MAPK pathwayをコードする遺伝子群)の遺伝子異常(非小細胞肺がんにおけるEGFR遺
伝子変異,ALK融合遺伝子,ROS1融合遺伝子,悪性黒色腫や結腸直腸がんにおけるRAF
遺伝子変異,GISTにおけるKIT遺伝子変異など)が検出された場合には,NTRK融合遺
伝子を検索する必要はない。
 Votingでは,費用面・頻度面等を考慮し,検査の実施は担当医・患者の判断にゆだねられ
るべきであることも指摘された。

局所進行または転移性固形がん患者
転移・再発固形がん患者に対してNTRK融合遺伝子検査は勧められるか?

1

. NTRK融合遺伝子と相互排他的な遺伝子異常を有する固形がん患者では,NTRK融合

遺伝子検査を推奨しない。

 

推奨度 

  No recommendation

[SR:0,R:0,ECO:6,NR:10]

2

. NTRK融合遺伝子が高頻度に検出されることが知られているがん種では,NTRK融合

遺伝子検査を強く推奨する。

 

推奨度 

  Strong recommendation

[SR:16,R:0,ECO:0,NR:0]

3

. 上記以外のすべての転移・再発固形がん患者で,TRK阻害薬の適応を判断するため

NTRK融合遺伝子検査を行うことを推奨する。

 

推奨度 

  Recommendation

[SR:7,R:7,ECO:2,NR:0]

CQ3

-1

51

Ⅲ NTRK(neurotrophic receptor tyrosine kinase)